2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年1月7日

1. インドネシアの海洋文化を再建する。インドネシアの将来は、海洋を如何に管理するかにかかっていることを認識しなければならない。

2. 海洋資源の維持・管理にコミットする。

3. 海洋インフラの増強を優先し、船舶業、物流、海洋ツーリズムを発展させる。

4. 海洋外交を通じ、密漁、主権侵害、領域紛争、海賊、汚染などの海洋紛争の源を断つ。

5. インド洋・太平洋の懸け橋として、海洋防衛力を増強する義務がある。

 ジョコウィ・ドクトリンは、海洋国家としてのインドネシアの地政学的、戦略的立場を反映したもので、これまでこのようなドクトリンが提唱されなかったのが不思議なくらいです。

 カーランツィックは、ジョコウィ・ドクトリンが中国を刺激する恐れがある、と言っていますが、中国の海洋進出こそインドネシアを海軍力増強に向かわせている原因です。他方、マレーシアとシンガポールの求めているのは、インドネシアの海軍力増強の透明性であり、ジョコウィ・ドクトリンを疑問視する理由にはなりません。

 論説が提示している第2の問題点は陸軍の抵抗ですが、これはウィドド大統領の指導力で乗り切っていくほかありません。カーランツィックは、第3の問題点として、インドネシアの海洋インフラ整備は外資に依存しなければならないが、種々の問題があり、欧米、豪州などの投資家は魅力を感じていない指摘しています。確かに、そうした問題点について、ウィドド政権が改善に努めることは必要ですが、海洋インフラの整備は本来民間資本だけに頼るものではありません。政府開発援助、そしてアジア開銀などの支援が考えられるべきでしょう。

 ジョコウィ・ドクトリンは、インドネシアの海洋国家としての立場をはっきりと示した点に、大きな意義があります。それは、インドネシアのASEANの盟主としての立場を強めることに繋がるでしょう。ジョコウィ・ドクトリンは、海洋安全保障を推進し、紛争に対処しようとするものですから、この点、我が国、米国を初め、フィリピン、ベトナム、インド、豪州など、地域の関係国の利害と一致します。日本としては、ジョコウィ・ドクトリンを後押しすべく、海洋インフラへの投資に加え、海洋安全保障に必要な装備・技術におけるインドネシアとの協力を促進する必要があります。

  
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