西側各国がアジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加を雪崩を打って表明したことにつき、数多くの論説が発表されていますが、その中から、米外交問題評議会のエコノミー上席研究員の3月21日付論説と、3月22日付ワシントン・ポスト紙社説を紹介します。両者とも、米国はAIIBに参加するのでもなく、他国の参加に反対するのでもなく、成り行きを見守るべきであると言っています。
エコノミーの論旨は以下の通り。
すなわち、AIIBに対する米の対応には、1)AIIBの統治手続きが保証されるまで同盟国が参加しないよう働き続ける、2)米国自体が参加する、3)そのままにしておく、の3つの選択肢があるが、1)は一層努力しても意味がない、2)は、AIIBの内部から統治に口が出せる、米国企業に機会を与えるなどの利点もあるが、面子の問題もあり今さら参加できない。
とすると選択肢は3)であり、他の国の参加に圧力を加えず、AIIBの実施を見守るのである。中国の海外投資はザンビア、ミャンマー、ベトナム、ブラジル、スリランカなどで大きな困難に直面してきており、AIIBが同じ問題を起こせば、中国にとってのみならず、参加国全体の汚点となる。世銀やアジア開銀と同じ基準で運営されれば、開発金融の追加という意味で歓迎すべきである。米国はアジア太平洋地域のすべての機構に参加する必要はない。
米国にとって重要なのは中国のイニシアチブにすべて反対することではなく、リバランスで米国の理念や制度を進めることである。AIIBは米国の重荷となっていたが、その重荷をおろすときである、と述べています。
出典:Elizabeth Economy,‘The AIIB Debacle: What Washington Should Do Now’(Diplomat, March 21, 2015)
http://thediplomat.com/2015/03/the-aiib-debacle-what-washington-should-do-now/
ワシントン・ポスト社説の論旨は以下の通り。
すなわち、英、独、仏、伊がAIIB参加を表明し、韓国と豪州の参加しそうなことは、米国のアジアにおける影響力の衰退を意味する。
もし議会が中国の投票権を増大させる形でのIMFへの増資についてのオバマ政権の要請を承認していたら、事態は異なっていたかもしれないが、今からIMF改正をしても遅すぎる。