米コロンビア大学教授でノーベル経済学賞受賞者のスティグリッツが、4月13日付Project Syndicateのサイトで、アジアインフラ投資銀行(AIIB)について、援助の流れを多国間化し貯蓄と投資をグローバルな規模で仲介する試みであると評価し、米国による反対を非難しています。
すなわち、AIIBの設立と、多くの国の政府によるそれに対する支持の決定は、IMF・世銀も含め、普遍的に祝福すべきことと思われるが、奇妙なことに、裕福な欧州の国々の参加は米当局者の怒りを触発した。
米国のAIIBへの反対は、経済的優先順位をアジアに置いていると述べていることと矛盾する。
中国が証明する通り、インフラ投資は大いに経済発展に貢献する。AIIBは、人、モノ、アイデアを自由に流入させ、投資を行き渡らせる効果を、アジアの他の地域にももたらすであろう。オバマ政権は貿易の価値を支持しているが、途上国では関税よりもインフラの欠如が遥かに深刻な障壁である。
AIIBのような基金には、さらに重要なグローバルなメリットがある。現在、世界は総需要の不足に悩まされている。
ベン・バーナンキは、FRB議長時代に、この問題を誤って「世界的貯蓄過剰」と言ったが、膨大なインフラ需要のある世界では、問題は、貯蓄過剰や投資機会の欠如ではなく、金融システムが貯蓄と投資をグローバルな規模で仲介できていないことである。それゆえ、AIIBは、グローバルな総需要に対し、ささやかながら大いに必要な後押しをし得る。
我々は、資金の流れを多国間化しようとする、中国のイニシアチブを歓迎すべきである。それは、第二次大戦後、それまで圧倒的に米国から来ていた経済発展資金を世銀の設立により多国間化した、米国の政策の模倣である。
昨年7月に設立されたBRICS銀行を含む、援助の流れを多国間化する新たな試みは、同様に、グローバルな発展に大きく寄与しよう。数年前、アジ開銀は競争的多様主義の価値を擁護したが、AIIBは、その考え方を開発金融において試す機会を提供する。
米国のAIIBへの反対は、1990年代末期の「新宮沢構想」への反対に似ている。当時も今も、多極化が進む世界において、米国はG1であり続けたがっている。資金の欠如と、危機対応についての誤った考えへの米国の固執が相俟って、景気停滞を必要以上に深く長いものにさせてしまった。
インフラ政策が他の政策領域よりも、イデオロギーと特別な利益の影響を遥かに受けないことを考えれば、米国のAIIBへの反対は、ますます理解し難い。さらに、インフラ投資における環境、社会保護の必要性は、多国間の枠組みにおいてこそ、より効果的に議論されることができよう。