シリアではアサド政権を支えてきたイラクからのシーア派民兵の多くが、3月にはティクリート奪還作戦のために母国に戻らざるを得なくなった。他方、シリア国内の反政府勢力はアル・カイダ系の「ヌスラ戦線」を中心に共闘作戦を取りはじめることとなった。それまで各派で分散していた反政府派の攻撃が、統一された作戦へと切り替わったことで質・量の両面で政府軍には強敵となっている。
さらに受け身に回ったアサド政権が、防衛拠点を首都ダマスカスと近郊に限定させたことも反政府勢力には幸いした。ISILもその隙を突く形でパルミラ攻勢に出ることができたわけである。
ISIL潰しにシーア派民兵を利用したい
アメリカの思惑
では、これからどうなるのか。筆者は6月末が期限のイランと米英仏等との核最終合意が影響すると見る。紆余曲折はあろうが、オバマ米大統領が外交的成果としてイラン核合意を必要としており、ロウハニ・イラン大統領も経済的成果として同合意が不可欠であることから見て早晩合意するはずだ。
それはイランの国際社会への復帰を意味する。これまでイランの後押しするイラクのシーア派民兵を表立って評価できなかった米英等も、ISILを叩くためとして同民兵の導入に前向きとなるのではないだろうか。
米国の進めるイラク政府軍やシリアの穏健な反政府勢力の訓練による育成には時間を要するし、時間をかけても成果につながるか疑わしい点も残ろう。そう考えれば、米英等がこの夏以降、ISIL潰しのためにイランのイラク・シーア派民兵支援を容認すると見るのは考えすぎだろうか。
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