2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年6月19日

 西側は、中国にリベラルな基準を押し付けようとしても、中国共産党の既得権益に打ち当たって失敗に終わるだろうが、中国を取り巻く環境を変えることにより、中国が望ましくない政策をとることをある程度制御できる余地を得られるだろう、と論じています。

出典:Michael Auslin,‘China’s Confidence Can Be Shaken’(Wall Street Journal, May 14, 2015)
http://www.wsj.com/articles/chinas-confidence-can-be-shaken-1431621333

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 中国を巡る国際環境に変化の兆しが見られることを活写した有益な論調です。今年の3月頃から、中国による南シナ海での埋め立てが大々的に取り上げられるようになり、この問題に対する米国の論調が、質量ともに従来とは異なる次元になっているように見えます。この論調からも米国内の対中認識が次第に厳しくなりつつあることが窺われます。

 そして、実際の政策面においても、オバマ政権は、中国による南シナ海での岩礁埋め立てへの批判を強めています。米軍は、沿岸海域戦闘艦(LCS)「フォートワース」をスプラトリー諸島の周辺海域に派遣して偵察活動を行い、P8対潜哨戒機「ポセイドン」を同空域に飛ばして偵察を行っています。また、大統領以下、政府高官、軍の高官らが相次いで、中国の南シナ海における行為を名指しで非難しています。

 国連海洋法条約は、人工の構築物の周辺に領海、経済水域等を認めていません。米軍による偵察は、そうした国際規範を目に見える形で示すという意味を持った行動ですから、継続されるべきでしょう。

 南シナ海での米中のせめぎ合いから新たな秩序が生まれるかどうか、期待し難いところではありますが、日本としては、既に約束している、フィリピンやベトナムへの巡視艇の供与等に加え、米国および有志国とともに、地域における、国際規範に基づいた海洋安全保障を確保する枠組み作りに努力をすることが求められます。それは、この論説が言うところの「中国を取り巻く環境を変えること」に他なりません。

  
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