2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年6月18日

 5月18日付の英フィナンシャル・タイムズ紙で、ギデオン・ラックマン同紙主席外交論説委員が、オバマ大統領が推進するTPPは、中国の勢いを削ぐことにはならないだろう、と論じています。

画像:iStock

 すなわち、オバマ米大統領はなぜTPP締結に必死なのか。公式には貿易障壁を撤廃し、繁栄を確保するためというが、本当の答えは中国である。

 TPPは中国を排除した米、日本を含む12か国の貿易取り決めである。ワシントンでは農業、為替、知的財産権が議論されているが、オバマと安倍の動機は戦略的である。

 米外交問題評議会のロバート・ブラックウエルとアシュリー・テリスは、「中国をリベラルな国際秩序に統合する努力は逆効果で、今や中国のパワーが米国のアジアでの優越を脅かしている」、これを押し戻すために「米国は意識的に中国を排除し、友好・同盟国と特恵的貿易取り決め」を結ぶようにと提言している。これはTPPのことである。

 日本にとっては、この戦略的動機はさらに強い。安倍総理は中国の台頭を恐れ、TPPを日米同盟強化のために重要とみている。米議会での演説で、この取り決めは「民主主義と自由」という観点から、その戦略的意義は大きい、と述べた。

 これらの発言には、日米両国の中国の台頭への恐れが反映されている。南シナ海では中国は埋め立てを進めている。米国はAIIBへの主要同盟国の参加を阻止できず、AIIBは中国の「一帯一路」政策の道具になっていくだろう。

 オバマ政権はTPPを、米国のアジア・リバランス政策が生きていることを示すものとしている。

 しかし、TPPはそれに求められている戦略的期待を満たすことにはならない。

 第1に、まだ合意ができ、国内的支持が得られるか、不明である。

 第2に、中国がアジア経済の中心になるのを阻止するには遅すぎる。すでに中国はTPP参加国の最大の貿易相手国である。TPPの交渉外の韓国・インドにとってもそうである。


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