本書には様々な勝負にあたっての“教訓”が
ちりばめられている
〈勝負は複雑にすると負ける〉
〈「自分のタイミング」で勝負しない〉
〈“力み”がすべてを台無しにする〉
〈運の量は無限である〉
〈「開き直り」は「逃げ」である〉
〈ポジティブ過ぎると失敗する〉
〈努力は勝率を上げるが、成功を保証しない〉
それぞれの詳しい意味合いは、読者が本書を参照しながら考えていただくとよいと思うが、合点がゆくポイントも多いことだろう。
特に「運」の部分についての記述は興味深い。「運の総量は有限」だと信じている人は筆者も含めて多いだろうが、本書では違う見方をしている。
〈運の量といったものは何も定まったものではなく、その人の考え方や行動によって運に恵まれたり、そうでなかったりするだけのことなのだ〉
〈「正しい選択」「正しい努力」を続けていれば、運は複利のように積み上がります。結局は、それをどれだけ続けていけるか、それが運の総量を決めているのだと思います。〉
要するに本人の考え方や行動次第で「運の総量」は変化させることができるということである。「一生分の運を使う」などと日常会話では決まり文句のようにいうが、この考え方によればそうではないのだろう。
もう一つ印象的な部分は「勝負所」という項である。著者の一人の桜井氏は、勝負強いといわれる人に共通する特徴として「勝負所」に強い点を上げる。
〈本当の勝負所というのは、ピンチの中のピンチ、圧倒的に不利な状況のときにこそ訪れる。それをしのいで状況をひっくり返す〉
またもう一人の著者である藤田氏は、〈大きな勝負所というのは、絶えずそれ相応のリスクを伴っているのです〉と指摘する。二人とも不利な状況にあっても、自分を追い込んで実力をフルに発揮し、ひるむことなく勝負に勝つことの重要性を説いている。
本書に示されている内容は、おそらく読む人それぞれによって感じ方が異なるだろう。だが、それはそれでよいと思う。一人一人の生き方は違うし、人生経験も異なっているからだ。故に万人向けの一律な教訓にはならないが、直感的には当たっていることも多いのではないか、という気がする。
麻雀でもビジネスでも、受験でも本当に勝負をかける時、人は全知全能を傾けるはずであり、極限の状況を経験する中で感じたことの多くは、おそらく極限の真実に近いものになるだろう。そういう意味で、人生における勝負の局面での魂のあり方を指南し、勇気づけてくれる一冊である。
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