米韓同盟への脅威認識を反映
韓国との「未来ビジョン」(13年6月)で習近平は「信頼プロセス」を「歓迎」したが、「民族の念願」たる統一との表現で「自主」統一への実質的支持を貫徹した。
そこには「外勢」排除のもう一つの意味、米韓同盟への脅威認識が反映されている。同ビジョンのいう「両者、地域次元のみならず、国際社会」での協力は、類似表現で既に合意されていた米韓共同「ビジョン」(09年)を相殺する。
米韓ビジョンで先に謳われた「二国間、地域、世界」での協力は半島をこえる「地域」同盟の発展を企図していた。これが合意されたとき米国は、東アジア地域で韓国を日本と並ぶ「パートナー」として中国に対処する「ミサイル防衛見直し」を進めていた(翌10年発表)。
米韓ビジョンの「地域」協力が中国の軍事力に対処するためなら、中韓「地域」協力と両立しない。米韓「地域」ミサイル防衛協力の抑制を目指す中国外交の成果が、中韓「地域」協力合意だったのかもしれない。
韓国が中国の批判する戦域高高度地域防衛(THAAD)を導入しない方針を明確にしたのは中韓ビジョンから4カ月後である(国防日報、13年10月16日)。
15年2月の国防長官会談以降、中国は在韓米軍のTHAAD受け入れも拒否するよう韓国を圧迫した。その後米韓合同演習が開始されると北朝鮮は中国との提携に期待を持ってTHAADを批判している。
北朝鮮外務省の声明によれば米国は「我々の強硬対応を誘導」することで中露を制圧する有利な条件たるTHAAD配備を強行し、日米韓によるアジア版北大西洋条約機構(NATO)形成の出発点にしようとしているという(15年3月26日)。
70年の歳月は分断を収束させず、いまも米国の盟邦が一党体制と対峙している─その認識を持たず習近平が朴槿恵の「信頼」に応じて見せたわけではあるまい。中国のソフト・パワー攻勢への効果的対応が、日米韓協力の要件となろう。
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