Fitbitは、GoProと同様に生産はEMS(シンガポールのFlextronics)に委託し、付加価値を付けやすいデザインとマーケティングに集中している。”Designed in California, Assembled in Asia.”(カリフォルニアでデザインしてアジアで組み立てる)というAppleがキャンペーンもやったスタイルだ。
デザインとは、生産に入る前の商品の企画や設計、そしてその商品を使った時の顧客の体験をデザインするという上流工程のすべてを意味する。また、マーケティングは商品を売るため、売ったらおわりではなく、購入した顧客に商品を使ってもらい、いかにしてよい体験をしてもらうための活動を含んでいる。
その製品が解決しようとする問題は何か?
Fitbitは「ウェアラブル」ビジネスにおいて先行し、これまでのところは成功している。それは「ウェアラブル」をつくろうとしたのではないからだ。センサーもウェアラブルも、何かの問題を解決するソリューションの手段にすぎない。
GoProもFitbitも、解決しようとしている問題が明確だ。どんな問題を解決しようとしているのか、そのシンプルなメッセージを製品に込めている。GoProはサーフィンをする時にすごい写真を撮りたい(けど撮れない)という問題を解決しようとした。
Fitbitが解決しようとする問題は健康(肥満)だ。その問題を解決するために、人々に動くことを促す必要がある。1859年にフランスで世界初のダイエット本が出版されて以来、肥満は人類が抱える共通の問題で、その基本的な解決方法は動くことだとされている。しかし動くことは面倒だ。Fitbitは、どれだけ動いたかを計測して知らせることで、人々が動き運動するモチベーションを保つことを手助けする。
Fitbitの成功を他者がだまって見ているわけはない。フィットネス・ヘルスケア機器の分野には、すでに多くの競合がひしめいている。Fitbitの今後の成長は、ブランド力の強化や、コアユーザーによるコミュニティやエコシステムの形成など、GoProのように先行メリットをどこまで活かせるかにかかっている。さらに、フィットネス・ヘルスケア機器はユーザーがすぐに飽きてしまうという問題にも取り組まなければならない。
しかし、その後を追うApple Watchは、ソリューションをつくってから問題を探してるような印象を受ける。Appleは、iPhoneありきウェアラブルありきで、素晴らしいデザインの時計をつくった(この場合の「デザイン」は少し狭い意味で使っている)。購入者もApple Watchで解決できる問題を、無理やり見つけようとしているように見えてしまう。例えばこんなことを言っている。
「Apple Watchのおかげて、通知が届くたびにポケットからiPhoneを取り出さなくて済む」
Apple Watchが解決しようとする問題は、いったい何なのだろうか。
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。