出典:David Ignatius,‘A diplomatic juggling act in Asia’(Washington Post, June 2, 2015)
http://www.washingtonpost.com/opinions/a-diplomatic-juggling-act/2015/06/02/658df7f2-0969-11e5-95fd-d580f1c5d44e_story.html
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この論説は、米のアジア政策は日中韓の強固な関係、協力の奨励ができればよい、などと言っていますが、日中韓各国と米国との関係の違いが正しく認識されていないように思います。
日韓は米国の同盟国ですが、中国は米国への挑戦も視野に台頭してきている競争者です。韓国は、米の同盟国でありながら、中国にすり寄る(AIIB加盟、中韓FTA締結など)一方、日本には歴史問題で厳しい態度をとっています。
米国は、そういう現実を踏まえて対アジア外交を構想すべきです。最近の米国の、南シナ海問題をはじめとする対中強硬姿勢、日韓関係改善の呼びかけなどは、概ねそうした線に沿ったものと言えるでしょう。米国と日中韓との関係をジャグラーのように操ることがアジア外交である、というイグネイシャスの論旨には賛成できません。
イグネイシャスは影響力のあるジャーナリストであり、彼がこういう考えを表明していることには、問題があると言わざるを得ません。
日韓間の慰安婦問題については、「もう終わりにする」ということで河野談話があり、歴史問題については、金大中大統領の時代に共同声明で踏み込んだ表現をして、それで終わりにするという了解がありました。韓国の今の要求は拒否すべきで、国内政治上の得点稼ぎに日本との歴史問題は使えないということを知らしめるべきでしょう。また、慰安婦問題の本質は売春であり、「性奴隷」という言葉は全く不正確です。
さらに、アジアでは、確かに北朝鮮は大きな問題ですが、中国の既存秩序への挑戦の方がより大きな問題です。こういう視点も、この論説には欠けているように思われます。日中韓を米国がジャグラーのように操るなどという見方は、ピントが大きくずれていると言うべきでしょう。
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