2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年7月13日

 豪州紙Australianのグレッグ・シェリダン外交担当編集員が、6月4日付同紙で、豪州政府が南シナ海で中国が造成した人工島の12カイリ内に航空機、艦船を進入させることを検討中である、と報告しています。

画像:iStock

 すなわち、豪州政府は南シナ海で中国が造成した人工島の近辺において「航行の自由」の意思表示をすることを検討中である。

 あらゆる選択肢が検討されているが、最も有り得るのは、北マレーシアのバターワースにある、かつての豪州の基地から空軍哨戒機P-3を飛行させることのようである。人工島の12カイリ内を飛行するので、北京が反応することは確実である。5月20日、米国は海軍哨戒機P-8にCNNのカメラを乗せてフィアリー・クロス礁の上空を飛行させた際、中国は繰り返し退去を命じたが、同様の反応が予期される。

 豪州は既にルーティンとして南シナ海に哨戒機P-3を飛行させている。アンドリュース国防相は、シャングリラ対話(アジア安全保障会議)で、中国に埋め立てを停止するよう要請した。豪州には島の帰属について特定の立場はとらないが、「航行の自由」は阻害されてはならないと主張している。

 政府はまだ決定を行っていないが、慎重な検討の上、実行されることとなろう。哨戒機P-3の飛行の方が容易に準備出来るので、海軍艦船の航行よりも先に行われよう。しかし、2、3ヶ月のうちに艦船も人工島の12カイリ内を航行することとなろう。

 艦船や航空機の派遣は米国主導のオペレーションの一環として行われるのではない。艦船については、フィリピンあるいはベトナムの港湾への寄港の途次という形になろう。北京が領海と考える海域を侵犯するために海軍を展開するということではなく、別の目的のための航海の一部としてたまたま航行するということである。それでも「航行の自由」の完全な権利を主張することになる。


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