努力をすれば報われる
成績の良かった佐久間さんは、小学校の高学年から塾に通い、中高時代は1時間半かけて進学校に通学した。
勉強だけでなく、スポーツも趣味の音楽もずっと頑張ってきたし、「イケてない」と思われないように、お洒落にも気を配ってきた。そんな生活を彼は、小学校時代から続けているのである。
努力をすれば、報われる。
報われるために努力をする。
人は努力をして、常に向上し続けていかねばならない……。
頑張れば、「報われたと感じられる」「わかりやすい“戦利品”」を今までは手に入れることができてきた。学歴や職業、スポーツ、そして趣味の分野では……。
しかし、当たり前だけど、「人」に関しては、“戦利品”がなにかなんて、誰にもわかるはずがない……というよりも、みんなに共通する「価値あるもの」なんて、あるはずはないのだ。
なのに、「それでも、きっとある」と信じて、彼は探し続けてしまう。
それは、佐久間さんだけでなく、誰もが行ってしまうことなのかもしれないけれど。
“隣の人”を愛せる人
ここで一つ、思い出したことがある。
私には同じ大学の理工学部に通った仲良し男子チームがいるのだが、彼らの人間関係を見ていて、あるとき気づいたことがあった。
「石田さんの親友が上田さんで、小野さんの親友が長部さん」なのだ。彼らはたぶん、最初の授業で前後の席になった人を友として、なんの問題もなく今までの10数年を過ごしてきたのだろう。その絆は年々、強くなっているとも感じる。
佐久間さんも、そもそもは理系のピュアな人間だ。
ということは、本来は隣り合った人を尊重し、仲良くできるはずの人なのではないか。事実、彼の交友関係を見ていると、それは叶えられていると思う。なのに、結婚相手に対してだけは、そういう関係づくりができない。
“探しもの”がなんなのか、自分でもよくわからないままに、「探す範囲を増やす資格や機会」だけがどんどん与えられて、そしていつまでも探す時間が終わらない……。
実家こそが新しい“絆”?
最後に、彼に聞いてみた。
「寂しいときはないですか?」
すると、「妹が子供と一緒に近所に住んでいるので、忙しいけど楽しいですよ」とこの日一番の笑顔で答えてくれた。
孝行息子の彼は、両親のために家を買ってあげていて、そこに妹さん親子も住んでいるのだとか。
両親と、妹と子供。
そこに彼の「この先も続いてゆく“絆”」が存在しているのかもしれない。
もちろん、彼が新しく作る「家族」がこの先できる可能性がないわけではないけれど。
追 記:総務省の調査によると、親と同居する35~44歳の未婚者は2003年には191万人で人口の11.7%だったが、2007年は262万人で 14.8%、2012年は305万人で16.1%と実数及び割合共に増加し続けていて、1980年以降で最多となっている。今どきの未婚者たちにとっては、実家とつながりを持つことが、現実的な“新しい”絆のあり方になりつつあるのかもしれない。
(URL内・表2参照:http://www.stat.go.jp/training/2kenkyu/pdf/zuhyou/parasi10.pdf参照
⇒第2回(「8月上旬」配信予定)に続く。
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