橋梁工事に強み
今年の4月9日にベトナムのホーチミンからカンボジアのプノンペン、タイのバンコクを結ぶ東南アジアの南部経済回廊でメコン川に架かるネアックルン橋(つばさ橋)が開通した。橋がなかったこれまではフェリーしかなかったため、繁忙時には7時間以上の待ち時間が発生するなど、物流輸送の障害になっていた。
日本のODAの無償援助資金により三井住友建設が中心になり契約して完成させた。日本名が「つばさ橋」と命名され、開通式にはカンボジアのフン・セン首相、日本からは国土交通副大臣らが出席した。橋ができたことにより、ホーチミンからバンコク、さらにはミャンマーまでの陸上輸送時間が大幅に短縮され、物流面の大きな経済効果が期待されている。この道路周辺には日系企業も多数進出、とりわけ自動車関連が多い。今年はASEAN(東南アジア諸国連合)の経済統合が予定されており、各国間を結ぶ道路がつながれば経済統合によるシナジー効果が生まれる。
東南アジアは大きな川が縦横にあるため、長大橋梁の建設が効率的な陸上輸送網になるかどうかの鍵を握っている。しかし、清水建設が受注したビンカイン橋のように軟弱地盤のところが多く、建設には地盤改良などの技術が必要で、こうした独自技術を生かせる日本のゼネコンは優位性があり、いくつもの橋梁の成約にこぎつけている。
海外の売り上げ比率増やす
日本の大手ゼネコンは、20年の東京オリンピックまでは国内の大型プロジェクトが目白押しのため仕事は手一杯の状況だが、オリンピックが終われば人口減少、超高齢化社会の到来で、国内の仕事は横ばいから減少するとみられている。このため、海外の受注は増やしていかざるを得ない切実な事情があり、大手ゼネコンの成長は海外戦略なくしてはあり得ない。
清水建設は現在の売り上げに占める海外比率は11%だが、同社の中期ビジョンでは20年までには総事業量の20%を担える体制を築く。大林組は14年度の海外比率が22%だったが、15年~17年度までの中期経営計画では、東南アジア、北米などでインフラなどの建設受注が見込めるとして25%にすることを目標に掲げ、これにより収益基盤の多様化を図る。
鹿島の海外比率は14年度は19%だが、6月に就任した押味至一社長は記者会見で「今後は3~4割にまで増やしたい」と述べ、海外での売り上げを一層増やす方針だ。鹿島は海外の開発プロジェクトも手掛けており、8月にはインドネシアの首都ジャカルタ中心部で25年掛りで進めてきた高級複合施設「スナヤン・スクエア」の開発が完了した。オフィス、ショッピングセンター、ホテルなどを1カ所に集めており、ジャカルタの名所になりそうだ。
思わぬリスクも
だが、海外案件はリスクも抱えており、新興国は法律や制度も未整備のため、予期せぬ事態を招くことがある。その一つが09年に完成したドバイ都市鉄道建設をめぐる工事のケース。発注者側との追加工事費をめぐる契約上の解釈の違いが原因だといわれているが、工事を契約した大林組・鹿島JVはこのトラブルで損失を計上した。
ほかにもアフリカのプロジェクトでは、発注者からの出来高支払いが滞り工事が中断した案件もある。新興国の案件は経済リスクに加えて政情不安など政治リスク、さらにはテロの脅威などにも対応しなければならず、ゼネコン各社は多くのリスクを背負いながらの受注獲得を目指している。
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