世界が驚いたAIIB設立だが、これで完結しそうにない。ブレトンウッズ体制の中核を担うIMFの元副専務理事が語る「中国版IMF」設立の可能性とは―。
ブレトンウッズ体制は、誕生した1944年からマイナーチェンジを繰り返してきたが、ドラスティックな改革が必要な時期に差し掛かっている。私は2004年から10年まで、IMFに在籍したが、その6年の間に日中の地位が逆転した。「従来の体制が許される最後の時代」だったと言えよう。それから「いよいよこの体制も限界にきているのでは」という思いを抱くようになってきた。

IMF改革が遅れている影響は大きい。10年に合意した新興国の議決権を拡大させる改革案がアメリカ議会で通らない。アメリカ国民にとって、直接の利益に繋がらないことが改革を遅らせている。
新興国の成長により、世界経済の勢力図が変化しているが、既存の国際金融機関はそれに対応できていない。これが中国のみならず、新興国の不満となっている。結果として設立されたのがAIIBだ。IMFがこのまま機能不全に陥っていると、中国はAIIBのような開発援助機関だけでなく、アジア版IMFのような機関を設立することも考えられる。
IMFには危機感があるだろうが、各国の思惑が交錯する巨大な組織であり、アメリカ議会の反対もあることから、改革は一筋縄ではいかない。
日本がADBを設立したときは、アジアの有力国ではあったものの、飛び抜けた存在ではなかった。本部も日本ではなく、フィリピンのマニラに置かれている。しかし、今の中国は、総裁は当然中国人で、本部も当然北京に置く、という状況だ。