人民元の国際通貨化は間違いなく進んでいく。何をもって基軸通貨かという問題はさておき、基軸通貨になり得る可能性はゼロではないと、AIIB設立のプロセスを見ていて可能性を感じている。人民元が中国との取引で使用される割合は高まってくるだろう。ただ、人民元建ての預金をもつ、人民元建ての債券を発行する、ということになると、ドルに比べて魅力は落ちる、というのが現在の状況だ。
基軸通貨になるには、金融市場の自由化、資本取引の自由化が課題となってくる。ドルへの信用はアメリカの経済力と安全保障上の地位があってのこと。中国がこうした地位に登りつめることができるか否かが課題でもある。
今年はIMFが創設した国際準備資産であるSDR(特別引出権)の構成通貨見直しの年。SDRの構成通貨に選ばれれば、国際的な準備通貨として認知されたことになる。中国当局の発言ぶりをみると、非常に熱心だという印象をうける。現在はドル、ユーロ、ポンド、円が構成通貨だが、ここに人民元が加わるか否かについては、人民元が交換可能な通貨になるか、中国が資本取引の自由化にどう取り組んでいくかということにかかっている。
AIIBでは、中国の出資割合に注目すべきだ。出資比率を決定するGDPの基準が、MER(実勢レート)になるのか、ppp(購買力平価)になるのかによっても相当変わってくる。域内国の出資割合を何割に設定するか、という点でも大きく出資比率は変動する。
見えづらい日本の参加メリット
4月に行われた日中首脳会談で、習近平国家主席が日本の参加を歓迎する旨の発言をしたと報じられている。日本の参加は、AIIBにとっては格付け上、プラスとなり、メリットを享受できる。これもどの程度出資するのかにより、メリットも変動するが、日本の参加がプラスに働くのは間違いない。また、日本はADB発足以来、中心的に関わってきたこともあり、国際金融機関の運営に長けた人材が豊富にいる。中国はこうした人材も求めているはずだ。
日本が仮にAIIBに参加することになれば、日本の国力に見合った発言権を求めていくことになる。そうなると、出資額も相当なものになる。これには、国民が納得するだけの利益が十分にあることが必須だ。現時点ではそれが見えていないため、様々な要素を適切に判断した上で、最終的に決断すべき。焦ってバスに乗り込む必要はない。日本が主導するADBのプロジェクトでさえ、日本企業はコスト高ということもあって、あまり受注できていない。こうした状況を考慮すれば、日本のAIIB参加のメリットは見えづらい。