2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年9月14日

 米国外交にとっての課題は、朝鮮半島の植民地化に遡る歴史認識に係る日韓の良好でない関係である。二つの同盟国の間の緊張は米国が解決は出来ないが無視も出来ない事柄である。問題の政治問題化を止めることと草の根レベルでの真実の追求の努力が助けになろうが、米国のコントロールの埒外のことである。米国が行い得る最良の政策は、北朝鮮の危険に対抗する三国の連携関係を構築することに焦点を当て、また三国が共有するその他の顕著な安全保障上の懸念を探求し、もって日韓両国の国民が相互の苦情はともかくとしてこの種の協力は利益であり当然であることを悟るようにすることである。以上の同盟関係は短期的には北朝鮮を封じ込める方策であるが、将来的にはアジア太平洋に真に多国間の枠組みを構築する上で中核となって然るべきものである、と論じています。

出 典:James L. Schoff‘Dark Clouds Over Asia’(Carnegie Endowment for International Peace, August 14, 2015)
http://carnegieendowment.org/2015/08/14/dark-clouds-over-asia/ietg

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 確かに、日韓の不和は米国にとって不都合でありましょう。米国が出来ることは、日米韓で共有可能な安全保障上の課題を見つけて三国間の共同作業を促すことにあり、そのことが日韓関係を解きほぐすことに資するという指摘は、的確だと思います。難点は、そういう課題として北朝鮮の脅威の他には直ちに思い当たるものがないことです。米国は、日韓の不和には腫れ物に触るような対応振りのようですが、米国自身が自らの影響力を過小評価することはありません。韓国の言動が行き過ぎと思われる場合、時として反日の言動を米国内に持ち込むことすらあるのですから、米国が正しく影響力を行使出来る場面はあるかも知れません。

 筆者のショフは、アジア太平洋に真に多国間の枠組みを構築することを将来の目標と考えているようです。どういう枠組みを念頭に置いているのか判りませんが、NATOのようなものを作る素地はアジアにはない上に、中国を排除する機構を作ること自体が不安定化の要素となります。さりとて、中国を取り込むために既存の協議の場に重なるものを作ることに意味はありません。米国を中心とする二国間の安全保障関係のネットワークを強化することが、合目的的で管理も容易であり、無理して多国間の枠組みを指向する必要はないように思います。

  
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