2024年11月22日(金)

サムライ弁護士の一刀両断

2015年10月22日

 一般に、今回のようなクラスアクションは、ほぼすべて和解で終了する。そのため、企業側がいくら支払ったのかが公開されないことが多いが、政府当局による罰金や民事制裁金の額などと比較しても、相当な多額になっていると推測される。例えば、トヨタ自動車が2012年に、米国での大規模リコールに関連するクラスアクションで支払った和解金総額は940億円であった。また、和解にこぎ着けるまで何年も要するのが通常であり、その間のディスカバリ(証拠開示)等の手続対応のほか、弁護士費用も被告側の会社にとって大きな負担となる。近年は日本企業も、例えば自動車部品やコンデンサなどの分野で、反トラスト法(独禁法)違反により多くのクラスアクションを起こされ、こうした負担を強いられている。今回のVWの件も例外にはならないであろう。

懲罰的損害賠償による巨額化

 VWに対するクラスアクションの請求内容はどういうものであろうか。例として、前述した不正公表の数時間後に提出された訴状を見てみると、「秘匿による詐欺」のほか、カリフォルニア州の不正競争法や消費者法といったさまざまな法律の違反が主張されている。これは、原告第1号となったVWのユーザーが同州の住民だったことによる。

 そして重要なのは、懲罰的損害賠償も請求されていることである。これは、加害行為の悪性が高い場合に、陪審の裁量により認められる賠償金である。実際の損害額に縛られないので、非常に高額な賠償が命じられることがある。今回のVWのケースでは、請求額が数千億円に達するとの見方も出ている。ただし、前述のとおり、クラスアクションは和解で終わるのが通例であり、実際の和解額はこれよりも下がる可能性もある。

 VWについては、クラスアクションとは別に、各州や郡レベルでの提訴も予想され、また実際に提訴されたケースも出てきている。州レベルでは、ウェストバージニア州やテキサス州で提訴がなされている。例として、ウェストバージニア州での提訴では、州の消費者保護法違反に基づき、民事制裁金(違反1件あたり約60万円)のほか、車両購入者への損失補償が請求されている。これらの訴訟によるVWの負担も最終的に莫大なものとなり得る。

欧州での規制に対する批判

 欧州では、市場の半数以上をディーゼル車が占めている。これは、EU(欧州連合)をはじめとする各国当局が、補助金や税制といった面で政策的なバックアップをしていることが大きい。今回問題となったVWのディーゼル車は、28あるEU加盟国だけで800万台(VWの発表台数の約73%)が販売されている。


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