前回はロボットの進化に関する歴史を参照し、背後にある宗教および産業を要因とした発展の仕方を検討した(http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5183)。ますます発展する人工知能やコンピュータ産業と平行して発展を遂げるロボットの姿は、我々の社会認識に大きく影響を及ぼすだろう。
今回は、人工知能同様社会に大きな影響を及ぼす「自動車」をテーマに考えたい。もちろん、先日発覚した独フォルクスワーゲン社の大規模不正問題や自動運転車など、自動車は常に社会の関心を呼び起こしている。ここで筆者が考察したいのは、自動車ではなく自動車に関する「保険」および未来の自動車産業だ。来るべき自動運転車を保険の観点から考察したとき、大きな問題が我々を直撃する。順を追ってみよう。
保険料が15年後には60%減少する?
自動運転車の開発は世界中が注目している。機械が自動で運転するための人工知能技術などが必要になるため、既存の自動車業界以外の企業も未来の自動車の開発に乗り出しており、代表格のグーグルが自動運転車を製作し、すでに多くの道路を走行していることは知られている。さらにアップルも自動車産業に参入するとの報道が一部メディアで語られているなど、IT企業がこぞって自動車産業に注目している。
自動運転技術の発展は、事故防止や運転ストレスからの解放、さらに機械が運転の無駄を省き、交通渋滞が緩和されるとも言われている。しかし一方で、事故の減少は保険業界にとっては大打撃となる。2015年7月30日付のブルームバーグの記事によれば、自動運転の発展に伴い、今後15年後には消費者の支払う保険料がおよそ60%減少するという。(詳しくは以下を参照 http://www.bloomberg.com/news/articles/2015-07-30/can-the-insurance-industry-survive-driverless-cars-)。
2014年においては、アメリカ国内だけでドライバーから1950億ドルの保険料を集めているが、コンサルティング企業の予想では自動運転車は2035年までに市場の4分の1を占めると同記事は伝える。実際、2013年に車間距離が近づきすぎるとビープ音がなる仕組みがにホンダ・アコードに導入されただけで、人身事故による医療費の支払い額が27%削減されたとの調査報告がある。
技術発展によって事故やそれにかかる費用が減少することは社会的にも保険業界にも良いことのように思われるが、少なくとも保険業界にとって、それまでのデータと比較して著しく事故が減少することは、結局のところ自動車保険の保険料を下げることにつながるわけだ。さらにシェア経済による自動車のシェア化、すなわち先進諸国の自動車所有者の減少という問題もある。