ワシントン・ポスト紙コラムニストのアン・アップルバウムが、9月27日付同紙にて、最近のプーチンのシリア介入などは国内での権力維持のための政策であると分析し、ウクライナ侵攻と同様、結局ロシアに不利益をもたらすことになろう、と論じています。
プーチンはロシアの利益を代表する世界的な政治家で、地政学的に他国と競争している人のように考えられがちである。最近のシリア介入は中東政治への再参加、地中海でのロシアの影響力行使、イラン支援、米の指導力排除の試みなどと描写されている。
これらは、すべて的外れである。プーチンのシリア介入は彼の行うほとんどの政策と同様、権力維持のための策である。プーチンは、最初の10年、次のように政権の正統性を主張した。「私は民主主義者でないかもしれないが、安定、経済成長、年金支払いをもたらした」。しかし石油価格下落、経済制裁、腐敗の蔓延で、この議論は有効でなくなった。ロシア人は、年々貧しくなっている。そこで、今は次のように主張している。「私は民主主義者でないかもしれないし、経済は沈下しつつあるが、ロシアは世界での地位を取り戻しつつある。それに権威主義にとって代わるのは民主主義ではなく、混乱である」。
革命に脅えるプーチン
プーチンには中東で真の影響力を行使する軍事力はない。アサドとの同盟で得られる戦略的利益もない。ただ彼は影響力があるように見える。それが意味を持つのである。国連総会出席と相俟って、プーチンは欧米の関心をウクライナの人道危機からそらし、制裁緩和につなげうるかもしれない。
しかし、影響力があるかのよう見せかけることが、より有効なのは国内においてである。我々はロシアでの街頭革命など考えられないと思うが、ドレスデンのKGBのオフィスから1989年に東独で起こったことを見、2011年にカダフィに何が起こったかを見たプーチンは、明確にそのようなことを心配している。民主主義に誘惑されないように国営テレビで欧米批判を繰り返している。プーチンは、アサドが独裁者として支配し、反対派を牢屋に入れる(ロシアでも必要ならそうする)のを助ける用意があるとのメッセージを発している。
プーチンは、アサドは「合理的反対派」(アサドはすでにその多くをロシア製武器で殺した)と交渉すべきであり、「シリア国民のみが支配者を決める権利がある」と言っている。しかし、シリア国民は諸問題において発言権を与えられていない。
プーチンのウクライナ侵攻はロシア国民にとってもロシアにとっても、経済、イメージ、影響力の面で悪かったし、ウクライナには悲劇であった。シリア介入からも同様な結果が予想される、と論じています。
出典:Anne Applebaum,‘Putin’s power plays’(Washington Post, September 27, 2015)
https://www.washingtonpost.com/opinions/what-putin-will-do-to-stay-in-power/2015/09/27/12a964b0-63b7-11e5-8e9e-dce8a2a2a679_story.html