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この記事は、韓国の対中接近につき懸念が強まるワシントンの中で、それを敢えて前向きに見てみようとしているようです。しかし、韓国の「賭け」が中国の変化をもたらすかどうかはわからない、対中接近は具体的な成果よりも希望に基づいたものだ、と冷めた見方もしています。戦術的にはともかく、中国が統一と対北政策につき戦略的に変わることは、少なくとも近い将来は考えられません。
対北朝鮮戦略を見誤るな 粘り強い交渉を
韓国の対中接近外交は重要なリスクを孕んでいます。韓国は、経済の重要性の他、南北統一に当たって中国の支持を確保したいと考えています。同時に、対中接近は中国の対外関係の中で北朝鮮を出来るだけ「疎外化」することを目的にしています。更に、対中接近については中国が仕掛けている面があります。日米韓の協力体制に楔を打ちたいという中国の基本戦略があります。既にTHAADの問題に見られるように中国の戦略は功を奏しています。韓国にとってバランサー外交は、米中や日中の間にあって永遠に魅力ある外交オプションなのでしょうが、日米韓協力体制の利益を得ながらそれを追求することは、そもそも機能するものではありません。韓国には戦略的選択が求められています。
朴槿恵は南北関係に大きな関心を持っています。2002年に訪朝し金正日とも会談、2011年には米外交誌に南北信頼外交の論文を書き、2014年1月には南北統一は「大博(テバク)」だと打ちあげ、同年3月にはドイツのドレスデンで対北政策を打ち出しました。南北問題はうまくいけば政権支持率を高めることにもなります。朴槿恵は硬軟両様の対北政策をとってきましたが、北は強く反発、未だ具体的成果は出ていません。抗日戦勝式典出席の際、習近平と統一問題につき有益な協議をしたと韓国政府は「自画自賛」していますが、韓国のメディアや識者の間からも、米日との関係の手当てが先決だとか、韓国が果たして中国と南北統一を語る段階にあるのか分からない、北朝鮮の核問題を先に解決するべきではないか、といった批判が出ています。
韓国が今やるべきことは、中国ではなく、北に対して辛抱強く交流を深め、それにより北の内政に影響を与えていくことではないでしょうか。予想以上の速さで達成された東西ドイツ統一は、往来の積み重ね、ソ連の弱体化、ゴルバチョフの新思考外交などの素地があって可能となりました。
統一問題については日本も良く思考しておくことが大事です。それは同盟帰属を含む北東アジアの安全保障に大きな影響を与えます。日米協議が重要であり、日米韓で話し合うことも試みるべきでしょう。
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