足立倫行のプレミアムエッセイ

2015年11月29日

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「花の乙女」や「紅顔の美少年」
“あれから50年”の変貌は想定内

 私は神奈川県立多摩高等学校出身なのだが、今年は卒業50周年ということで何年ぶりかの同期会があり、新宿の高層ホテルのホール会場に約90名が集まったのである。

 「花の乙女」や「紅顔の美少年」の“あれから50年”の変貌は想定内。改めて驚いたのは、会場入口で配られた出席者90名の近況を綴った<交流コメント集>だった。

 親の介護や孫の世話、趣味三昧(ゴルフ、水泳、園芸、囲碁、旅行、コーラス、美術館巡りなど)は当然としても、意外に何かを「勉強中」やボランティア活動が多いのだ。

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 書道や写真、『論語』の教室に通ったり大学の公開講座を受講したり、外国人の子供の学習支援や小学校、図書館での本の読み聞かせ、少年野球の球団代表、東日本大震災復興支援の海岸林再生プロジェクトへの参加など、知的好奇心の方向や地域活動の分野が多岐にわたっている。

 今も現役で仕事を続けているのは私を含め10人ほどで、大半の同期性は退職した年金生活者なのだが、自分の少年時代、青年時代を振り返っても、当時の年輩者がこれほど多彩にして充実(?)した退職生活を送っていたという記憶はない。「一番の楽しみは孫と一緒に信州の別荘で過ごすこと」「秋には(夫と)また南仏で2~3カ月滞在」などサラリと記されたコメントを読むと、「イマドキの庶民の老後はどれほど優雅なのだ!?」と唖然とする。

 こういう例を紹介すると「それは出席できた幸運な少数者」という声が必ず上がるが、今回は出席できなかった137名のコメント集も<その2>に載っており、そちらを読んでも「意気軒昂な退職者」像は変わらない。

 もちろん「病気療養中」や「体調不良」も散見するが、地域ボランティア活動や習い事と重なっての欠席がかなりあり、中には「脱サラして有機農業のプロ百姓」や「約40坪の庭を入手してバラの庭作り」「今回はカナダ行とぶつかって欠席」など、旺盛な行動力が垣間見える様子は出席者たちと大差ないのだ。

 当日は、誰彼となく熱に浮かされたように喋っていたので頭の中が整理できなかったものの、日が経って10ページに及ぶ<交流コメント集>を読み直してみると、我々ジジババ世代が社会的にいかに「プレミアム(付加価値付きの熟成)世代」が、よくわかる。

 過去に例がないほどの、豊かで、自由で、年を取った連中の大量出現なのだ。

生きている限り働き続けねばならない

 もっとも、私個人は、「プレミアム世代に属していても例外的存在では?」と思う。

 何より、無年金者だ。大学を中退してから一度も会社勤務がなく、ずっと収入不安定なフリーなので、厚生年金も国民年金も無縁。旧友たちのように「まだ仕事中」なのではなく、生きている限り働き続けねばならない。

 家はあるが、亡父から相続したもの。しかも実際住み始めたのは今年の夏からだ。

 それに私は多摩高校の卒業生ではない。多摩高校に入学はしたが、在学は2年生の終わりまでで、卒業したのは長崎県の高校だ。

 そのあたりのハミ出し具合は、これからいずれ触れることになるだろう。ともあれ私は、「プレミアム世代」のド真ん中にいる「こぼれプレミアム」、ということになる。
  
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