1カ月前のWEDGE infinityに「アベノミクス3年目の曲がり角」と題した記事を書いた。アベノミクスの「矢」のなかで、唯一機能した日銀の異次元緩和も手詰まり感が濃厚となってきたことに警鐘を鳴らすものであった。筆者の悪い予感は現実のものとなりつつある。その後、12月に開催された金融政策決定会合で日銀は量的質的金融緩和の「補完措置」なるものを発表した。これは株式市場の不興をおおいに買い、日経平均は日銀の「補完措置」発表の当日から翌週にかけて5日連続で下落した。市場が日銀不信を強めた結果であろう。前回の記事は、来年の株式相場展望の「前触れ」というか「頭出し」の位置づけだ。なぜなら、来年の相場展望をキャッチフレーズ風に言い表すと、「大回り3年 アベノミクス相場の曲がり角」ということになろうからである。
2012年から上昇に転じた日本株相場、このままいけば今年も年間リターンはプラスで終わった。これで4年連続の上昇となる。振り返れば、2012年末の安倍晋三政権誕生を機に、この上昇相場がスタートした。実際には、2012年11月、当時首相だった民主党の野田氏が衆院を解散すると宣言した瞬間から株価上昇が始まったのだが、その時点ですでに安倍政権誕生が確実視されていたわけだから、「2012年末の安倍政権誕生を機に」と言っても間違いではないだろう。その意味で、この相場はまさに「アベノミクス相場」であり、したがって相場の帰趨はアベノミクス次第であるというのが筆者の考えだ。
「小回り3カ月、大回り3年」
その安倍政権は12月26日で誕生から3年が経ち、4年目に突入した。株式相場の格言で、「小回り3カ月、大回り3年」という。相場のサイクルは小さな周期で3カ月、大きな周期は3年で一区切りとするものだ。日本株相場もそろそろ転機を迎えると考える。それは、前述したようにこの相場はアベノミクス次第であり、その肝心のアベノミクスが息切れしてきているからである。
安倍政権は、来年の参院選まではなんとか景気のいい話題をばらまいて市場の歓心を買おうとするだろう。しかし夏場を過ぎたら要注意だ。17年4月に消費税を再び上げるなら景気が減速するのは自明のことだから、相場はそれを先取りして手仕舞い売りに押されるだろう。戦後、東証が再開してから日経平均が5年連続で上昇したことは、80年代バブルの異常期を除いてなく(*)、4年連続が最長である。過去のパターンにならえば来年はマイナスのリターンとなると思われる。これは先ほどの「大回り3年」という格言にも一致しよう
(*注:78~89年まで12年連続の上昇を記録した)。
結局、日本株相場にとってアベノミクスで効果があったのは日銀の金融緩和とコーポレートガバナンス強化等による企業改革を促す政策だけである。アベノミクスの矢はこれまで新旧合わせて6本出されているが、もう限界だろう。そもそも「新3本の矢」は発表直後から「矢」でなく「的」であると疑問符がつけられる始末。もうこれ以上、有効な「矢」が打ち出されるとは思えない。