憲法改正、トランプ、IS、米中衝突……
選挙絡みの不確定要因として、もうひとつ、参院選で憲法改正が争点とされるリスクについて挙げておく。そうなれば株式市場にとっては無論、ネガティブ材料である。
海外にも波乱材料は多い。2016年最大の注目材料は、米国大統領選の行方である。ヒラリー・クリントン氏の本命は揺るがないが、万が一にもトランプ氏となれば世界の市場は動揺するだろう。
もうひとつ、重大な懸念材料は地政学リスクの高まり。なかでも筆頭は中東情勢である。非常に混沌としており、専門家でもまったく予測不能という事態に陥っている。まさにカオス的な状況だ。イスラム国(IS)だけでなく過激派組織が無数に生まれ、宗教と民族の対立が情勢を複雑にしている。何がどう転ぶかまったくわからない。ひとつ言えるのは、一昔前の国際関係に基づく常識は通用しないということだ。
中東から離れれば、南シナ海の緊張が日本にはいちばん影響が大きいだろう。しかし、短期的に、例えば2016年中になにか大きく事態が変わるかと言えばそれはないだろう。世界1、2の大国である米国と中国は「大人の関係」を維持するだろう。特に2016年は米国大統領選の年であり、オバマ政権は事実上幕引きを飾ることだけに専念している。難しい政治判断については既にレームダック化して久しい。米国側から過激なアクションはないし、習近平政権も長期でじっくり事を構える様子がうかがえる。
こうした状況でいちばん怖いのが「偶発的な事故」である。以下は朝日新聞の報道だ。
<米軍の戦略爆撃機B52が今月中旬、南シナ海で中国が埋め立て、領有権を主張する人工島から12カイリ(約22キロ)内を誤って飛行したことが、わかった。米国防総省当局者が明らかにした。米紙ウォールストリート・ジャーナルによると、人工島から2カイリまで接近した。中国外務省は、米政府に「厳重な申し入れ」をしたと発表した。米側は調査中と応じたという。>
軍事的な挑発行為ではなく、あくまで悪天候が原因の飛行ミスとのことだが、これに対してもしも中国が攻撃を加え、米軍機を撃墜でもしていたら……と考えると空恐ろしい。しかし、そのリスクは現実に起こり得る。そしてその偶発的リスクが示現する際には、トルコがロシア軍の戦闘機を撃墜した際の騒ぎとは比べものにならないインパクトを世界に与えるだろう。その場合、いちばん、過激に反応するのは日本株相場であることは言うまでもないだろう。
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