効果があったように思われる日銀の追加緩和にせよ、コーポレートガバナンス革命にせよ、「期待」を先食いして相場が上昇したに過ぎない。事実、賃金が上がって2%のインフレが達成されたわけでも、日本企業のコーポレートガバナンスの意識が格段に改善して企業価値が大幅に向上したわけでもないのだから。そして安倍政権から期待を先食いさせるような政策はもう出てこないだろう。2016年は期待先行で買った夢から覚めて現実を直視する年となるだろう。
前半の相場は堅調に推移
まず年前半、日本株相場は堅調な推移を辿るだろう。ひとつには季節性がある。年前半は相場が上昇しやすい。昨今ではすっかり人口に膾炙した感のある「Sell in May (5月に売れ)」という相場格言も、春まで相場が強含む傾向を言い表したものである。
今年はさらに材料がある。7月の参院選だ。安倍政権としては参院選の前に、景気や株式相場を冷やすような状況は是が非でも避けようとするだろう。否が応でも市場の歓心を買うような言動が多くなるはずだ。5月の伊勢志摩サミットから「上げ潮」に乗って参院選に臨みたいはずであろう。
ファンダメンタルズ面では4月下旬から5月にかけて2015年度の決算発表を迎える。そこで上場企業の2期連続最高益更新を確認することになるだろう。好決算を受けて6月の株主総会シーズンを前に増配や自社株買いなど株主還元策もぞくぞくと発表されると思われ、これも相場の地合いを良くするだろう。ただし、懸念は企業側が発表する慎重な来期業績見通しに引きずられることだ。そちらにバイアスがかかれば相場の天井は低くなる。
もうひとつ年前半、相場の押し上げ要因になると思われる材料は日銀の追加緩和だ。前述した日銀の「補完措置」は追加緩和の布石であり、追加緩和をおこないやすくするのが日銀の狙いであることは明白だ。追加緩和のタイミングは4月だろう。春闘で賃上げが思うように進まないことを確認し、それを理由に追加緩和に踏み切るとみる。
以上のように年前半は、1)相場が上がりやすい季節性、2)伊勢志摩サミット・参院選を控えて景気浮揚を狙った政策運営期待、3)2期連続最高益での着地~3期連続最高益期待、4)株主還元策の強化、5)日銀の追加緩和などを材料に株式市場は堅調に推移し、5月か6月に2万2000~3000円程度の高値をつけると予想する。