Wedge REPORT

2016年1月17日

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ダンスが上手くなるためには

 「よく聞かれる質問で、『ダンスが上手くなる秘訣はなんですか』というものがあります。でも、その前に思い出して欲しいのは、ダンスは音楽に合わせて踊るものである、という事実です。振り付けの練習では、振り付けられた曲で練習しているのだと思います。でも、ストリートダンスは音楽に合わせて踊るダンスです。もっと言えば、音楽の中にあるビートに合わせて踊ります。普段からヒップホップやファンク、ハウスミュージックを好きで聴いているのか。大事なのは『音楽が好きなのか』ということだと思います。

 リズムを合わせるのは、ドラムのドンドンドンという音です。叩いた時に大きく聞こえ、徐々に音は消えていきます。リズムを取るには、その消えていくところも追っていくんです。リズムの取り方ができないとヒップホップにはならない。チアリーダーがヒップホップのステップをしてもヒップホップにはなりえないんです。ヒップホップダンスが上手くなるには、このリズムの取り方を体に染みつけることです。一度リズムが身に付けば、ステップを踏みながらでも、手足を動かしながらでも、このリズムがキープできます。

小中学生の習い事として人気の高いヒップホップダンスのスクールには、初心者の大人が訪れることも多い(写真提供:スタジオ・フェイス)

 今、問題なのは、すぐに結果を求めすぎることだと思っています。そこには世の中の考え方の流れがあると思うんです。音楽でも好きな曲だけダウンロードできる。だから、好きなアーティストでも、アルバムをじっくり聞いて、『ああ、この曲もいいな』なんて体験が少なくなっているように思います。好きな曲だけを聞いていたり、できればタダで、みたいな気持ちもあったりして。カルチャーがカラオケなんです。ダンスも自分が踊ってることに満足している。満足することは大事ですが、ダンスは自己表現なんですよね。そして誰かに共感してもらうことで、感動が生まれるし、仲間も増えていくんです。

 例えば、ダンスのイベントでもあることなんですが、自分が踊ったら帰ってしまうダンサーが多いんです。イベントは最初に駆け出しのダンサーからスタートして最後にゲストのダンサーが踊るんですが、自分たちが踊り終えると帰ってしまうことがあって。客席が空いたままゲストが踊るようなことになってしまうんです。これって、ダンスが好きじゃないんですよね。踊ってる自分が好きなんです。踊ってることが、ただ気持ちいい。それを深めていこうっていう気持ちがない。

 よく見られるのは、腕の振りが多いダンス。目立ちますし、踊ってる気になるんですよね。でも体幹のリズムがない。いわばパラパラダンスなんです。でも、ストリートダンスの本当の良さや感動は、音楽とシンクロできることにあるんです。踊っていることで幸せな気持ちになれる。それはダンスをやめても一生残るものなんです。車に乗って音楽を聞いている時でも、そのシンクロを感じて幸せになれるんです」

1/31 大田区産業プラザで世界大会の最終予選を開催

 スタジオ・フェイスは東京都港区赤坂、千葉県浦安市、長野県飯田市、石川県金沢市の4つのスタジオを展開している。インタビュー当日は、ちょうど飯田校に行く前だった。「ストリートダンスがあまり理解されていないので、立て直そうと毎週通っています。大人の初心者が結構来てくれて。地方って、やっぱり情報が少なくって、根本的なものをまずしっかり理解する必要があると思っています」と、地方でのヒップホップダンスの普及活動も兼ねている。

 自らは世界でも賞を獲るようなトップダンサーだったが、今、コンテストで優勝するようなチームを育てるのは物理的に難しいという。「それこそ、師弟関係のようになって、毎日踊りつめる必要があるんですよね。僕は色んな所に行ってるから、片手落ちになってしまう。適材適所で、自分はそういうのには向かないな、と思っています」

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