2024年12月2日(月)

Wedge REPORT

2016年1月13日

 病気や事故で手足を切断した選手が松葉杖をついてプレーするアンプティサッカーの日本選手権が、昨年11月末に神奈川県川崎市の富士通スタジアム川崎で行われた。2015年5月開催の「第二回レオピン杯Copa Amputee」以来の大会となり、全国から6チーム約60名が集合。日本アンプティサッカー協会の最高顧問セルジオ越後氏が見守る中、2日間にわたる熱い戦いが繰り広げられた。

片足の選手が松葉杖をついてプレーするアンプティサッカー。日本代表は、2014年のメキシコワールドカップで決勝トーナメントに進出するなど、その実力を伸ばしている

アンプティサッカーとは

 30年以上前にアメリカの負傷兵が、松葉杖をついてプレーするサッカーをリハビリテーションとして始めたのがアンプティサッカーの起源といわれる。日本には2010年に導入され、2010年、2012年、2014年と3大会連続でアンプティサッカーワールドカップに出場。2014年メキシコ大会では、初勝利を手にし、決勝トーナメント進出も果たしている。

 フィールドプレイヤーは主に片足の切断者で、日常生活で使われる通常の松葉杖「クラッチ」をついてプレーする。一見両足に見えるが骨盤を失っており両足の長さが異なるプレイヤーがいたり、両足を失っていて片足は義足のプレイヤーがいたりなど、足の状態は選手それぞれである。GKは主に片手を切断しており、片手だけでプレーする。残っている腕の長さにより、セービングがしやすいことから、今大会から使用しない腕はユニフォームの中に入れ、同条件でプレーすることになり、より競技性を追求する大会となった。

サッカーで障がいを超えていく

 昨年4月に第一回障がい者サッカー協議会が日本サッカー協会(JFA)で開催され、日本アンプティサッカー選手権大会2015にも、「サッカーなら、どんな障がいも超えられる」と7団体のポスターが掲示された。7団体とは、切断障がいの日本アンプティサッカー協会、精神障がいの日本ソーシャルフットボール協会、知的障がいの日本知的障がい者サッカー連盟、電動車椅子の日本電動車椅子サッカー協会、脳性麻痺の日本脳性麻痺7人制サッカー協会、視覚障がいの日本ブラインドサッカー協会、聴覚障がいの日本ろう者サッカー協会を指す。

日本アンプティサッカー最高顧問は、サッカー解説者のセルジオ越後氏が務める。「アンプティサッカーを通して、障がい者が暮らしやすい社会につながっていけば」と話す。大会2日目にはJ1フロンターレ川崎のマスコットふろん太くんも応援に駆けつけた

 JFAは「誰もが、いつでも、どこでも」サッカーを楽しめる環境整備を重点施策に掲げており、その取り組みの一つとして障がい者サッカーの普及推進を行っている。この7団体はサッカーを通じて、社会にある障がいを超えていくきっかけを作っていこうと試みている。寒風吹くスタジアムで2日間試合を見守ったセルジオ越後氏は、日本の障がい者文化について、こう話してくれた。

 「障がい者サッカー協議会に参加した7つの障がい者サッカー団体の一つにアンプティサッカーがありますが、大きな意味で、障がい者という捉えられ方を変えていきたいと思っています。日本では、障がい者ってかわいそうだと勘違いされているように思います。また、過保護になったり、距離を置くようになったり。宗教によって障がい者への対応って違うんですよね。ブラジルだとカトリックで教会が障がい者のサポートをしてくれるから、もっと日常的なものになっているんです」

 様々な障がいを持つ人がグラウンドに出ることで、社会に出るきっかけをつかんで欲しいと願うセルジオ越後氏は、2020年に向けても課題があるという。「日本では2020年に東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。パラリンピックをどう応援するかは、日本にとって大きな宿題です。高齢化社会が進んでいて、これから寝たきりや車椅子の人が増えていきます。ここと付き合う文化が必要になるんです。人が人と付き合う文化ですよね。そのためにも、障がいのある人とない人がスポーツを通してコミュニケーションすることで、始まっていくことがあると思っています」


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