アンプティサッカーから地雷撲滅を発信
今回の大会は、日本アンプティサッカー協会の副理事長で日本代表監督でもある杉野正幸氏が念願だったという「観客席のあるスタジアム」での開催であったり、各チームのロゴ入りテントが寄贈されたり、また5月のカップ戦のメインスポンサーだった湧永製薬が2日目の全試合をユーストリームで生中継するなど、アンプティサッカーのつながりが着実に広がっていることが、選手のプレー以外からも見て取ることができた。
また、大会にあわせて地雷撲滅キャンペーンも行われた。大会スポンサーや来場者から募った寄付金が開催地・川崎市の姉妹都市であるベトナムのダナン市での地雷・不発弾除去の費用に充てられる。ベトナムには350万個の地雷が埋まっており、これまでに6万人もの犠牲者を出している。
セルジオ越後氏は、アンプティサッカーから地雷撲滅キャンペーンを積極的に発信していきたいと語る。「これにはアンプティサッカーから社会へのお返しの意味合いがあります。足をなくすっていうのは、サッカー選手にとって大問題です。片足のアンプティサッカー選手が、地雷撲滅をうたうことに意味がある。そして、アンプティサッカーからJリーグ、FIFA(国際サッカー連盟)とサッカー界に届けていきたい。アンプティサッカーは社会的にメッセージが発信できるスポーツでもあるんです」
多くの選手と話して感じるのは、 彼らがアンプティサッカーをきっかけに人生を前向きに送ることができるようになった、ということである。そして、日の丸を背負ってワールドカップを戦えるチャンスがあるという目標も、 刺激的で魅力的なチャレンジとなっている。病気や事故など、アンプティサッカーをするに至った経緯には、計り知れない事情と葛藤がそれぞれにあると思う。ただ、そういうことも含めて、今があるということを感じることができた選手の言葉がある。アシルビー千葉・北海道の金井隆義選手が、大会終了後、こう話してくれた。 「例えば、僕たちに『ゴールを運んで』って言われても無理ですし、技師装具士がいないと歩くこともできない。障がい者スポーツって、みんなでやるスポーツなんですよ。だから、こうしてプレーできていることを当たり前だと思わないで、みんなで楽しんでいきたいと思います」
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