いつか来ると恐れていた懸念が現実になった。最大のイスラム教国である東南アジアのインドネシア・ジャカルタ中心部で白昼、爆弾と銃撃によるテロ事件が発生、カナダ人ら民間人2人と犯人グループの5人が死亡した。過激派組織「イスラム国」(IS)が犯行声明を出した。インドネシアの1万8000人の邦人社会に衝撃が広がっている。
11月末にテロ情報
警察当局の発表などによると、事件は14日午前10時半頃、市中心部で起きた。銃の乱射や手投げ弾、自爆テロによる3件の襲撃が相次いで起こり、コーヒーチェーンの「スターバックス」と、通りを挟んだ交通警察の詰め所が標的となり、犯人側と警察との間で銃撃戦が展開された。犯人グループは5人が死んだが、2人はバイクで逃走したという。
「スターバックス」のビルには日本人会の事務所があり、日本の書籍の図書館もあり、訪れる在留邦人が多い。また近くには日本大使館や日系企業のオフィスが多数あり、日本人が巻き込まれても不思議ではない状況だった。ジャカルタの日本人学校は15日は休校になった。
事件後、ISが「インドネシアのISの戦士が十字軍の集まる場所を標的にした」との犯行声明を出した。IS系のツイッター上のニュース・チャンネル「アマク」も「ISの戦闘員が外国人と治安部隊を狙った攻撃を実行した」と発表した。
事件後に会見した国家警察のカルナビアン将軍によると、犯行グループはシリアのラッカのIS指導部とつながりがあり、「バハルン・ナイム」というインドネシア人戦闘員が犯行を指令した、という。この男は2012年に西ジャワ州で武器などを違法所持した容疑で有罪判決を受けている。
同将軍によると、男はIS傘下の東南アジアの軍事組織「カティバ・ヌサンタラ」の指導者。同組織はインドネシア、マレーシア、フィリピン、タイを含む東南アジアで作戦を拡大しているという。
今回の事件は少なくとも7人以上がテロ作戦に加わっており、周到に準備された大掛かりな犯行と言える。昨年11月にパリで起きた同時多発テロと同様、シリアのIS本部で計画され、それに基づいて現地ジャカルタで具体的な標的の設定や武器・爆薬の入手、作戦の手順などが決められたようだ。
インドネシア治安当局は昨年11月後半、「同国でコンサート(テロ)が開かれるだろう」というISの情報を入手して掃討作戦を展開、過激派約10人を拘束した。その後も米国やオーストラリアなどからテロ情報が寄せられ、当局は15万人を動員して警戒を強めていたが、今回のテロを防ぐことができなかった。