「序章にすぎない」
インドネシアでは2002年、有名なリゾート地バリ島で過激派組織「ジェマ・イスラミア(JI)」による爆弾テロで202人が死亡、09年にもジャカルタで米国系のマリオットなど高級ホテル2カ所で爆弾テロが発生した。その後は米国の支援を受けた治安部隊の過激派掃討作戦により、JIは弱体化、大きなテロは起きていなかった。
しかしISが台頭するにつれてインドネシアからシリアのISに合流する若者が増加、約700人がシリアに渡って実戦に参加し、一部は過激思想を身に付けて既に帰国しているとされる。JIの創設者である収監中のアブ・バカル・バシルも獄中からISに忠誠を誓うよう呼びかけを行っているが、国内の潜在的なIS支持者は2000人前後いると見られている。
ジャカルタのテロがISの指示に基づく犯行とすれば、ISがパリの事件を契機に世界各地でのテロ作戦に乗り出したことを意味する。アジアではこれまで、パキスタンやバングラディシュでISのテロが発生していたものの、東南アジアでは本格的なISのテロはなかった。
しかし今回、ISのテロがインドネシアに波及してきたことに同地域の各国の治安当局者は「ジャカルタのテロは序章にすぎない」(テロ専門家)と懸念を強めている。今後、マレーシアなどにもドミノのようにテロが広がる恐れがあるというのだ。
ISはシリアやイラクでの戦況が劣勢になればなるほど、自分たちの力が残っていることを誇示するため海外でテロを起こす危険性が増す。それも警戒が厳重ではないソフト・ターゲットが狙われる公算が強い。私たちもテロとの戦いを身近なものとして防衛する時がやってきたようだ。
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