2024年4月19日(金)

WEDGE REPORT

2016年1月18日

 台湾の人々は、蔡英文に「台湾は台湾という道をしっかり歩んで欲しいが、中国ともほどよい距離を保って付き合ってほしい」という願いを持っている。そのことを十分に知っている蔡英文は、だからこそ、当選後に最も注目された当選演説のなかで、支持者に向かって「現状維持は私が台湾の人々に対して行った約束であり、国際社会に対する約束でもあり、言った以上は必ず守る」と言い切った。これが目下のところ、蔡英文が発信した最重要メッセージだ。

 民進党が「台湾は台湾」という道を捨てないことは誰もが知っている。しかし、「現状維持」を守れるかどうかには不安を抱いている。そのことに対して、蔡英文ははっきりと、両立を約束したと読み解くべきである。

色褪せた「中国国民党」と「一つの中国」

 三度目の政権交代となった台湾の民主化は着実に成熟していき、台湾社会における台湾アイデンティティの強化は今後も不可逆的に続いていくだろう。一方で、情勢の変化に応じて、「安定」を求める張力が高まる日もいずれやってくる。その日のために国民党はどのように備えていけるのか。敗者となった国民党が再起を図るには、今回の敗因を深く受け止め、問題が山積する党の再生に取り組むしかない。「台湾は台湾」ということが大前提となった社会のなかで、「中国国民党」という党名と「一つの中国」という蒋介石時代の看板を抱えながら、生き残れるほど台湾政治は甘くないことを、今回の選挙は示したのである。


  
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