ロシア・プーチンの選択
中国誌『読書』は9月号で「共和国60年と中国モデル」との特集を組んだ。その中で、ある識者は「(世界では)この一年で転換あるいは構造の緩みが出現した」として「4大歴史趨勢」を掲げた。
(1)米国を軸とした一極体系の崩壊
(2)民主主義の後退
(3)資本主義グローバル化の苦境
(4)非西側世界(中国、インド、ブラジルなど)の全面的台頭
そして「4大趨勢は、多かれ少なかれ中国の台頭と関係がある」と指摘、中国台頭はこの4つの構造の転換を加速させたというのだ。続いてこう「中国モデル」を称賛する。
「中国の政治体制は北京五輪開催、四川大地震の処理、世界的な金融危機への対応など重大な挑戦に直面した際、『統籌兼顧(トンチョウチェンクー:統一して計画して各方面に配慮する)』の能力を発揮した。これは西側国家の政府が追随することが難しいものだ。だから最近数年間で西側の専門家は、中国の政治体制も一部では優越していると認め始めた」
昨年8月末、北京五輪が成功した際、中国政府幹部は筆者にこう言い放った。「北京の安全を(約170万人に上るボランティア動員という)人海戦術で守った。こうしたやり方は社会主義国が得意とする手法だ」
テロ、経済危機、災害、感染症……。農民暴動や炭鉱事故、環境汚染など国内が危機だらけの中国では、指導者選抜の際に危機管理能力が問われるよう変化している。共産党は、危機が発生した際、迅速に大量動員をかけられる独自の「中国モデル」を優位と見ている。
さっそく「中国モデル」に関心を示した政党が現れた、という興味深いニュースが、10月19日付『ヘラルド・トリビューン』紙に掲載された。ウラジミール・プーチン首相率いるロシアの与党「統一ロシア」である。
同紙は1面にこう見出しを掲げる。
「ロシアは政府モデルを見つけた。それは中国である」
「プーチンの党は、経済成長を推進しながら統制を強化する道を模索する」
同紙によれば、ロシア高官がこう指摘しているというのだ。
「われわれは、中国における党・政府組織の経験に関心を抱いている。そこでは与党、司法、議会、行政当局の協調関係が存在している」
共産党が検察や裁判所の判断にまで口出しする中国の悪名高き司法制度まで参考にしようというのである。
水と油の「G2」と「鶏兔」
イラク戦争の泥沼化やリーマン・ショックで存在感が低下する米国と、世界経済をけん引し、世界最大の米国債保有国としても影響力を増す中国が、共に世界を支配するという「G2」論は、体制・統治・発展の「モデル」の異なる国家同士が果たして協調・連携できるのかという議論を巻き起こしている。