オトナの教養 週末の一冊

2016年2月3日

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中村宏之 (なかむら・ひろゆき)

ジャーナリスト

1967年生まれ。91年、慶應義塾大学経済学部卒、読売新聞東京本社入社。ロンドン特派員、米ハーバード大学国際問題研究所研究員、経済部デスク、調査研究本部主任研究員などを経て2017年4月より読売新聞東京本社メディア局編集部次長。『御社の寿命』、『世界を切り拓くビジネス・ローヤー』、(いずれも中央公論新社)など

 本書は入札に関して基礎的な知識がない人でも、一読すればひととおり理解できるビギナー向けのしっかりとした解説書と見ることもできる。入札にはこれまで挙げたようなメリットやビジネスチャンスだけでなく、デメリットがあることをしっかり指摘しているのも好感が持てる。手続きに時間がかかる、企業情報を公開する必要性がある、保証金を求められる可能性がある、支払いが仕事の終了後になる、といったことなどである。厳密にはデメリットとまでは言えず、ごく当たり前なことなのであろうが、そうでない商習慣に慣れている場合には注意が必要であろう。

ベルギーやスイスなどの国家予算に匹敵する

 本書は入札の種類や仕組みを知れば、個人事業主でも大きなビジネスをつかむ可能性があること教えてくれている。失敗談や「べからず集」なども盛り込んで、非常に実践的な内容となっている。

 本書の著者は首都圏の駅でよく見る「のりかえ便利マップ」を考案した福井泰代氏である。女性らしくこまやかな視点が本書の構成にも活かされている。

 本書によると、中央省庁、地方自治体、独立行政法人などが一年間に公示する入札関連総額はなんと本書のタイトルにもあるように20兆円規模であり、これはベルギーやスイスなどの国家予算に匹敵する水準であるという。

 日本の行政の仕組みは複雑すぎるがゆえに、手続きを理解する難解さや、資格要件のクリアなどが事実上の参入障壁になっている。まさに入札のわかりにくさや、とっつきにくさは、そうした典型だろう。しかし少し入札のことを勉強して知的な武装ができれば、実はさほど難しくないのかもしれない。ごく普通の読者をそうした前向きな気持ちにさせてくれる本でもある。

  
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