2024年12月22日(日)

ASEANスタートアップ最前線

2015年11月17日

 私は現在ジャカルタに滞在している。長期出張という形で、投資先の半分を占めるここジャカルタで、投資先企業の経営・事業開発支援することが私のミッションである。これまで、東南アジアのマーケットの概要やトレンド、ファウンダーや投資家が、いかに日本と比べてアグレッシブかについて書いてきたが、これから3か月は、よりスタートアップの経営の「現場」に近いところにいるため、より現地の人々の生活の目線からレポートを書いていきたい。

 ジャカルタ発の最初の記事は、「KUDO」にフォーカスをあてる。KUDOは、工藤さんが設立した企業ではない。インドネシアの人口の約8割を占める銀行口座を持たない人々、いわゆる「The Unbanked(アンバンク)」にEコマース文化を浸透させることを理念に掲げた、偉大な企業だ。

ジャカルタの風景。ここに住む人々の多くが銀行口座を持たない

アンバンクの人々はコミュニティ内の「信用」が大事

 まず、アンバンクの人々の暮らしを紹介したい。

 銀行口座を持っていない。日本人からすると、それは想像しにくい世界だ。そもそも、彼らの月収は3万円前後である。貧しいという社会の現状から、家族・友人以外の他人を信用することが難しい。それが例え銀行であっても、彼らは大切な現金を預ける、ということに抵抗を感じるこれがインドネシアの国民の大部分の感覚である。人によっては空き缶のようなものに現金をつめて地面に埋めたり、金のネックレスや指輪に変えて常に身に着けたりする。こうした方法が、銀行に預けるよりも、彼らにとってはより安心できる資産の管理方法なのだ。

物を買う、ということについてはどうか。彼らは、他人から物を買うことにためらいを感じるのだ。コミュニティの中での信用できる人からしか物を買わない。日本では、友人に「物を売りつける」行為は不信感を与え、時に友情関係を壊す場合があるが、ここインドネシアでは逆に働く。友人に「物を売る」行為は、「友人を信用している」行為につながり、むしろ友情関係が深まるという。コミュニティの信用が社会の基盤になっているのを裏付けるかのように、インドネシアでは、多くの人がFacebookを使う。実に、5000万人がFacebookユーザーだ。


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