『ノマドライフ』などの著作でも知られる、レバレッジコンサルティング代表取締役の本田直之氏をモデレーター(司会者)に、「アメリカでの戦い方」と題したトークショーが、10月28日にロサンゼルス(トヨタUSA自動車博物館)で開催された。主催は、ロサンゼルス情報誌の「Weekly LALALA(ウィークリー・ラララ)」。開催のきっかけは、「昨年、サンノゼで開催した第1回目のトークショーが好評だったため、ぜひロサンゼルスでも」と、Weekly LALALAの代表取締役社長、森辰雄氏。
パネリストは、アメリカで活躍するビジネスの達人、Rakuten.comの社長の小林史生氏、ゴーゴーカレーグループ代表取締役の宮森宏和氏、iichiko USA, Inc.北アメリカ・ビジネスディベロップメント・マネジャーの宮崎哲郎氏、日本貿易振興機構ロサンゼルス事務所の次長川渕英雄氏の4人だ。今回は、起業家、日系企業やアメリカ企業の社員などロサンゼルスを中心にアメリカで働く日本人らが、約130人参加した。
まずは、モデレーターの本田氏から自己紹介を交えながら、近未来の予測がなされた。本田氏は、年の半分をハワイ、3カ月を日本、2カ月をヨーロッパ、1カ月をアジアやオセアニアで過ごす。「これができるようになったのは、iPhoneで移動しながら仕事ができるという仕事のスタイルの変化によるもの」。
次の10年はどんな変化が起きる?
たとえば、2005年に遡ると、仕事で使うツールは8割がデスクトップで、2割がノート型パソコンだった。それが、2010年にiPhoneが2割(ノート型パソコンが8割)に変化し、2015年にはiPhoneが7割を占めるようになった。「10年でこれだけの変化があったから、5年先、10年先はさらに進化し、おもしろい時代になっていくだろう」。また、キーボードがなくなり、iPhoneを音声操作できるSiriなどが主流になる時代や、iPhoneなどで同時通訳ができる時代に突入することも予測する。
このような時代を踏まえて、まず、小林氏から、買収した企業のマネジメントのコツについてのトークが開始された。「例えば、日本からの指示をアメリカ人にそのまま伝えることで、うまくいかないケースも考えられる。重要なのは、目的は変えずに、手段をどのように現地に合わせて変えていくかということ」。
また、終身雇用の概念がなく、引き抜きや転職が日常茶飯事のアメリカのインターネット業界では、 「2、3年で職を変えていくことが当たり前の世界」だ。「このため、社員の対応に関しては、キーになる人たちには、アメリカ国内だけでなく、楽天グローバル全体で様々なオポチュニティ(チャンス)があることを見せることも重要、アメの部分を見せる必要性もある」と話す。
アメリカにおける「ゴーゴーカレー」、「いいちこ」
「一度訪問したニューヨークに再訪するための手段として決意したのが、石川県のカレー屋の出店だ」。こう話すのは、宮森氏。「きっかけは、メジャー1年目に本拠地の開幕戦で、満塁本塁打を打った松井秀喜に刺激を受けたこと」。現在、展開する店舗数は、約70店舗。従業員教育は、日本からニューヨークへ職人を送った。「スタッフは日本語が話せず、職人は英語が話せない。しかし、身振り手振りで意思疎通を図った」。このように宮森氏は、商売には言葉やビジネススクールで学習したことより、いかに実践が重要であるかを実証する。
「アメリカ本土の焼酎の認知度はゼロに等しい。しかも、30ヵ国に輸出する焼酎は日本人しか飲まない」。この現状を打破し、ウォッカ、ラムなど4大スピリッツに、焼酎を加わえて5大スピリッツとし、焼酎で世界を変えることを使命とする宮崎氏。
「実は、『いいちこ「バーフルーツゆず」』は、ハワイでブームになっている。その火付け役は、ソーシャルネットワークによる口コミだ」と明かす。従来の人から人へ拡がる口コミが、今では、人からソーシャルネットワークを通じて、さらに何倍もの人へと拡散されるようになった。「とりわけファンション系や若い人たちの間で人気なのが、インスタグラム。誰かにシェアしたくなるような驚きが詰まったコンテンツをアップするなど、これらソーシャルネットワークをいかにうまく使いこなすかが、ビジネスを成功へ導くコツになる」。