2024年11月22日(金)

ASEANスタートアップ最前線

2015年11月17日

KUDO 創業者のAlbert
「インドネシアにEコマース文化を創りたい」

 KUDOのファウンダー・Albertは、インドネシアで生まれ育った。大学はアメリカの大学卒業後、ゴールドマンサックス、アップル、ボストンコンサルティンググループと絵に描いたようなキャリアを歩んだ後、UCバークリーでMBAを取得。普通のMBA留学生ならアメリカでより良い職を求めるものだが、彼は、生まれ故郷のインドネシアに戻った時に、アメリカで当たり前のように浸透しているEコマースが全くないことに衝撃を受け、故郷のジャカルタで起業することを決意する。

 Albertは、起業した当初から、他の投資家とは一線を画していた。まず、起業家は、投資家にビジネスのアイディアを会議室やカフェなどでプレゼンするため、プレゼン資料を作るのが普通だ。人によってはその資料作成に時間やお金をかける者もいる。しかし、Albertは全く異なった。これは私の上司から聞いた実話だが、彼が私の上司に会いに来た時、彼は手ぶらだった。手ぶらで、彼は自分のビジョンを語りつくし、幾人かの投資家を口説いたのである。後述するが、それくらい、KUDOのやり方は画期的だった。

 また、Albertは、私が知る限り、最もハードワーカーな起業家の一人である。夜飲みに行こうよ!と誘っても、彼が来ることはほとんど無い。無意味な夜のお酒に付き合うよりも、プロダクトをデベロップさせ、従業員をドライブさせ、ビジネスを前に進めることの重要さを知っているのだ。そして、寝ない。一方で、彼は投資家や外国からの訪問客は非常に丁寧にもてなす。前回私が日本の投資家を連れて訪問したときも、眠そうな顔で、しかし力強くプレゼンをしてくれた。真の起業家とはこういうものか、と思わせてくれる。

KUDOのタブレット端末で、Eコマースの営業代行
追加収入のインパクトがムーブメントを起こす

ジャカルタの個人商店。Eコマースとは無縁に見える

 さて、いよいよKUDOのサービス・ビジネスモデルについて紹介したい。

 KUDOは、タブレット端末をローカルの「エージェント」といわれる人に配る。「エージェント」の多くは、個人商店や専業主婦、学生など様々だ。「エージェント」は、銀行口座を持たなければいけないが、これがエージェントにとっての唯一の必要条件だ。

 エージェントはまずKUDOへ送金することによって、デポジットをしなければいけない。たとえば100ドルをデポジットすると、KUDOが配布するタブレット端末に100ドル入る。エージェントは、自分たちの顧客に、KUDOが配布するこのタブレット端末を通して100ドル分オンライン購入させることができるのだ。顧客のほとんどはアンバンクである。彼らは信用する友人や家族からEコマースという新しい形で物を買い、現金をエージェントに渡すのだ。

 一回の購入を通して、エージェントは5%のマージンを得ることができる。マーチャント側からのマージンをKUDOとエージェントで二分割するのが彼らのビジネスモデルである。商品は住所を登録すれば顧客に直接送られる。住所が無い場合もあるが、その場合はエージェントの住所に送られ、エージェントから顧客に商品を手渡しするケースもある。


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