現地環境への適応で成功収めたKUDO
このKUDOの端末だが、非常にうまく設計されている。「うまい」というのは、インドネシアの通信環境に照らし合わせた工夫がされているのだ。
インドネシアは、日本のように通信環境が早く安定的ではない。遅い上に、不安定だ。そこで、KUDOは遅い通信環境でもサクサク稼働できるように、送信するデータを極力削減する、という工夫をした。提携先のTokopediaやBukalapakといったオンラインマーケットプレイスからデータフィードを連携しているため、KUDO本体には約10万SKU(=Stock Keeping Unit。在庫管理の最小単位のこと)もある。しかし、これを全て通信していたらインドネシアの環境では到底機能しない。そこで、そのエージェントのエリア・プロフィールに沿って最も売りやすい商材300SKUぐらいにしぼってデータを配信するのだ。データの量を削減することで、遅い環境でも売りやすいEコマースを実現した。同時に、エージェントに「売りやすい」商品をレコメンドすることで、全体の売上を最適化している。
今日現在で、1000人を超えるエージェントがおり、現在3000人もの人がエージェントになりたいがためWaiting Listにいる。それもそうだ。彼らの平均月収は3-4万円というのが平均だ。彼らは副業でもなんでもして、少しでも暮らしをよくしたいと考えている。エージェントは平均で6万円稼ぐのだが、売上の5%、3000円が彼らの追加収入となる。月3万円の収入の人から見れば、3000円は10%の収入アップになるため、非常に大きなインパクトだ。KUDOの評判は瞬く間に広まっている。
アンバンクの特徴として、非常にコミュニティの力が強くコミュニティ内での信用が重要であると述べた。営業代行として、友人や家族に物販の販売を促進するKUDOのビジネスモデルは、日本では時に友人関係を壊しかねないが、インドネシアのコミュニティでは、ポジティブに働くのだ。アンバンクの顧客は、信用する人から「初めてのEコマース」を経験し、便利で楽なものだと知る。そして、どんどんKUDO型Eコマースにはまっていくのである。
「誰もがエージェントになれる時代に」
KUDOが目指す途上国の新しいEコマース
KUDOの目指す世界は、タブレット端末にとどまらない。野心高く、次のステージを目指している。それは、APP、WEBブラウザを提供し、「誰もがエージェントになれる」世界を目指している。
現在、物理的にタブレットを配る理由は、インターフェースの情報を常にKUDO本社から最新にし、また遅い通信環境でもうまく機能できるようにデータ量をコントロールするためにあった。しかし、ひとたびAPP、もしくはWEBサイトという形で自分のスマフォからアクセスできるようになれば、より多くの人がKUDOのエージェントになることができる。Albertは、手ぶらでプレゼンしていた頃から、この世界ができることを目指していた。
KUDO型のEコマースは、途上国へのITサービスモデルとして、今後、他の国にも転用されるであろう。「信用×IT」という新しい形、文化と技術の融合という切り口から経済全体を底上げするKUDOは、今、世界中の投資家から注目されている。ベンチャーキャピタルが、こんなに経済開発に貢献できるなんて思わなかった。KUDO型のEコマースの成功の是非はいかに。数年後が楽しみだ。
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