「HLAというのは民族によって頻度というものが随分違っていて、日本を含む東アジア、この民族はDPB1の*05:01というものの頻度が非常に高い、それに対して欧米人はこの頻度が非常に低い」
「子宮頸がんワクチン薬害説」への批判はたくさんあるが、中でも「日本人に特有の薬害などない」というのが強力な反証の一つであった。しかし、ワクチンによるものとされる症状は日本人に頻度が高いDPB1*05:01のせいであるという説明がつけば、この批判を乗り越えることができる。池田教授は「日本人だけに起きているのは当然」と主張する目的ありきでDPB1*05:01に注目し、DPB1*05:01に有利となる誤った統計解釈を意図的にマスコミに流してきた可能性がある。
池田教授はさらにこう続けている。
「こういう遺伝的バックグラウンドが、ワクチンを打った後の副反応の出やすさに関係しているかもしれない」
筆者は本稿を書くにあたって、池田教授にHLA型データに関する質問をした。
すると、「HLA geno-typingの結果表示で、DPB1 05:01 アレル(遺伝子)についてその遺伝子頻度とこのアレルをヘテロまたはホモで有している個体頻度をもう少し明瞭に分けて示さなかったことが混乱の原因になったと考えております。鹿児島大学のデータについては高嶋博教授へ直接お問い合わせ下さい」という回答を返してきた。
統計学や遺伝学以前の大きな疑問
ところで、多くの一般の医師は、池田班発表に対し、統計学や遺伝学以前の大きな疑問を持っていることをご存知だろうか。
それは、池田班が解析の対象としている「脳障害」の患者群の疾患定義が、発表内容からはよくわからないことだ。
次のスライドは、池田班が「脳障害」とする患者の臨床症状を示している。しかし、記憶力低下、集中力低下、朝起きられない、光がまぶしいといった症状は、ワクチンを打っていなくてもよくある症状だ。
池田教授は「脳障害がワクチンと関係があると判断した」症例としてこんな少女を紹介している。
「なぜこの脳障害がワクチンと関連があると我々が考えたかという例をお示しします。この患者さんは2010年ですかね、サーバリックスを打った後から、四肢の脱力、全身倦怠感、車椅子使用となり、起立性調節障害と診断して、薬物療法とリハビリテーションを行った。その後、杖歩行まで改善したので学校行こうということになったんですが、幼児向けの本しか理解できない。学校へ行ってうまくいかないと言うんですね」
しかも、この少女の脳PET画像を撮ると、前葉頭頂葉の神経細胞が働いていないことが分かり、高次脳機能検査(精緻な知能テスト)をやってみると、通常のIQや動作性のIQは悪くないが、処理速度だけが極端に悪いという。