2024年12月5日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年4月7日

 英フィナンシャル・タイムズ紙のガードナー国際問題編集員が、3月2日付同紙掲載の記事で、2月末のイランの選挙について、イランはこれまでと異なる政治的環境にあり、ロウハニには過去の改革派と異なり成功するチャンスがある、と分析しています。論旨は次の通り。

2009年、アフマディネジャドの再選に対し抗議するイラン市民(iStock)

 1997年5月、ハタミが投票率90%弱、得票率70%で大統領に選出された。民衆の称賛が高まる中、ハタミは、法の支配の下にある、より自由な社会、説明責任を果たす政府を約束し、1年のうちに米国との間で「文明の対話」を開始しようとしたが、全ては失敗に終わった。強硬派は、司法、イスラム革命防衛隊(IRGC)、議会を監督する監督者評議会、最高指導者ハメネイの周りに再結集、ハタミは政治的に弱体化し、アフマディネジャド選出に繋がった。

 2009年のアフマディネジャドの不正な再選に抗議する、改革派による「緑の運動」は容赦なく鎮圧された。今回の選挙でロウハニがうまくやったことは再び希望をもたらしたが、何が今までとは違うのか。

一掃された反動的指導者たち

 イラン内部の力のバランスは、任命制で最高指導者に責任を負うイスラム機関が、選挙で選ばれる共和国機関に対し圧倒的に優位のままである。しかし、今やロウハニの与党が強硬派への強力な壁となっている議会は、イランが強く欲する投資を可能にするのに必要な経済改革を実現させ得る位置にある。

 変化の文脈も異なる。イランは、世界との再関与、経済的強さの再建に傾いている。若年層は、イランを孤立させてきた化石のようなイデオロギーを持った高齢の復古派による独裁には、うんざりしている。

 「改革派対強硬派」以外に、今の政策を支持する幅広い勢力と、核合意に反対し開放を国家反逆罪に等しいとみなす勢力の対抗がある。前者には、最高指導者ハメネイ、保守派だがロウハニの同盟者のAli Larijani国会議長の支持がある。後者の多くは有権者により排除された。

 さらに、イランを徐々に開放しようとの政治的勢力が、イランで重要な機関の内部に入り込もうとしている。同時に行われた専門家会議(8年の任期中にハメネイの後継者を選ぶことになる)の選挙で、ロウハニは、専門家会議のテヘラン選挙区の16のうち15の議席を得て、反動的な指導者たちを一掃した。


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