表面的にはロウハニはハタミに似ているが、ロウハニは国内の支持をより広範に集めることができ、よりタフである。両者の重要な違いはここにある。20年前、イランの体制は、ハタミがゴルバチョフのようになり、イラン革命に終わりをもたらすことを恐れた。ゴルバチョフは国内よりも海外で称賛されたが、ハタミはちょうど逆だった。
それも変化した。核合意により、国際的なイラン傾斜が起こっている。米欧は、地政学的プラグマティズムと商業的機会ゆえに、イランの国際社会への復帰を望んでいる。ロウハニの前途には厳しい戦いが待っていようが、ロウハニにはハタミとは異なりチャンスがある。
出典:David Gardner,‘Rouhani brings hope that this time it might be different in Iran’(Financial Times, March 2, 2016)
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/814cdfd2-dfdb-11e5-b67f-a61732c1d025.html#axzz41xWyNDxm
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地殻変動起きたイラン政治
2月26日に行われたイランの議会と専門家会議の選挙は、イランで保守強硬派の支配体制に地殻変動が起きつつあることを示しました。
投票数の3分の1を得た候補者がいなかった選挙区では、4月に再選挙が行われ、そのような選挙区が50以上ありますが、2月26日の選挙で、改革派が躍進し、保守派が後退したことは明瞭です。首都テヘランの40の選挙区では、改革派が完勝、最高指導者を選ぶ任務を持つ専門家会議でも、テヘランの16の選挙区のうち15の議席を得たといいます。
しかも、これは保守派の選挙妨害を乗り越えてのことです。イランではいわゆる監督者評議会の審査にパスしないと立候補の資格が得られません。選挙前、監督者評議会は改革派の大量の候補者を失格としています。
カギ握るのはハメネイか
改革派は、あらゆる手段でユニークな選挙戦を展開しました。FT紙の外報部長兼副編集長のRoula Khalafによれば、改革派の選挙運動員はソーシャルメディアを駆使して投票を呼び掛け、改革の担い手としていまだに人気の高いハタミ元大統領のメッセージをビデオで流したということです。このように、若者などを投票へと駆り出させたのは、ハタミの変わらぬ人気によるものであったということです。
今回の選挙で改革派が躍進したからといって、イランの政治が保守強硬路線から改革開国路線に急展開するとは考えられません。法学者グループ、革命防衛隊などを根城にする強硬派の影響力は簡単には弱まらないでしょう。しかし強硬派も今回の選挙で示されたイラン国民の総意をいつまでも無視できません。
カギを握るのはやはりハメネイでしょう。ハメネイは一般的には強硬派と目されており、今でも時々米国非難の発言をしています。しかし核交渉のイニシアティブをとったのはハメネイです。ハメネイは制裁を解除してイラン経済を立て直したかったに違いありません。ハメネイは外国の投資を受け入れ、イランと世界との通商の復活を望むでしょう。この点に関しては、ハメネイは通常の強硬派と異なります。イランの統治体制は、徐々にではありますが確実に変わっていくと思われます。
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