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2016年4月8日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

「外圧」を利用

 米国のファンドでは、07年ごろにスティールパートナーズと呼ばれるファンドが、日本株を買い占めて市場を騒がせたことがあった。サッポロホールディングスの株式をTOB(株式公開買い付け)で大量に取得、株価が大きく変動するなどして、サッポロは慣れないファンドへの対応策に追われた。このほか江崎グリコ、ブルドックソースなどの食品株などを相次いで取得した。このファンドの狙いは株式取得の情報を市場に流すことで株価をつり上げて売り抜けるのが狙いだった。ブルドックソースに対するTOBは訴訟になり、東京高等裁判所からはスティ-ルのやり方は「濫用的買収者」と判断されてスティール側の負けが決まり、10年ごろには日本株をすべて売却して撤退した。

 サード・ポイントがトップ人事に影響を与えた事例では、昨年12月に大手化学会社の大合併として世界的な話題になったダウ・ケミカルとデュポンのケースがある。サード・ポイントのローブ代表は、ダウ・ケミカルのアンドルー・リバリスCEOの解任を求めており、今年後半に予定されている両社の合併成立と同時にリバリスCEOは退任するとみられている。

 今回のサード・ポイントの手法について市場関係者は「サード・ポイントは株式を買って株価をつり上げる単純なやり方ではなく、企業価値が上がる方法を提案しており、ある意味で正論を主張している。ファンドが直言してくれたことで、社外取締役も思ったことが言えたのではないか。社外取締役はサード・ポイントという『外圧』をうまく利用した。ガバナンス(企業統治)が問題視される中で、アクティビストのファンドの動きは注視する必要がある」と指摘する。

増える外国人持ち株比率

 外国人株主の持ち株比率は、セブン&アイが36・7%、ソニーが55・8%、トヨタ自動車が29・7%(いずれも16年2月現在)と、かなりの比率を占めてきている。東京証券取引所によると日本の上場企業(東京、大阪など4市場含む)の株式の外国人投資家の持ち株比率は、15年3月末で31・7%あり、毎年増えている。この数字は長年、持ち株比率トップだった金融機関の比率を上回っているとみられ、「日本株式会社」の筆頭株主はいまや外国人投資家になったと言える。今後は上場企業の経営者は、こうした外国人投資家の「物言う株主」の要求にも真摯に答えていかざるを得なくなりそうだ。

  
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