「こういう人なのだ」と
固定的にとらえるのはよくない
以前、うちのある店で、セクハラの問題が起きました。20代の女性社員が、男性社員につきまとわれ、困っていると苦情を言ってきました。私は、女性に言ったのです。
「俺が陪審員として立ち会うから、お前と彼の3人で話し合いの場を設けよう。君は、その場で男に文句を言ってみろ。私に近寄るな、不愉快だ! と。それだけではなくて、男を首にしてくれと言うならば、私が辞めさせる」
3人で話し合ったとき、男は非を認めました。女性は、私に言いました。「半径500キロほど離れたところの職場にあの男の人がいくならば、私は被害を受けないから、首にしないでいいですよ」。男性には九州への転勤を命じました。男は、九州に赴任しました。
セクハラの問題などのとき、双方の言い分を聞くことなく、すぐに辞めさせることはしたくないのです。
あるお店で、こんな問題も起きました。店長の男性が、パート社員の女性と深い関係になったのです。2人は独身でしたが、中絶することになってしまいました。私は、店長の男性を叱りました。2度目の中絶だったからです。ほかのパート社員らが店長に、「人殺し! 私は、こんなお店をもう辞めます!」と言い始めた。店長に嫌気がさしたのでしょうね。
私は、そのパート社員たちに言ったのです。
「店長が悪いに決まっている。たしかに問題はあった。だけど、合意のうえでのこと。店長だけを一方的に責めていいのか? 今回は許してあげてほしい。おまえら、それほどに聖人か!? 辞めるなんて言わないで、この店で一緒に働いてくれないか?」
パート社員の女性たちは、店長の男性を許したのです。ただし、男性は降格させました。そのうえ、「朝、真っ先に来い、フルタイムで働けと。夜は皆が帰ってから、帰れ。パートの皆が許してくれるまで精魂込めて働け!」。
これは、社員教育でもあります。当然、トラブルの責任として、男性がその女性に多額の金額を払わせるようにしました。オトシマエはつけさせないといけない。
私は、言いたいですね。「あんな部下を使いたくない!」と口にする人に、「ふざけんなよ。偉そうに……」と。自分のことを棚上げし、きれいごとばかりを言うんじゃない! 社員を1つのワクにはめたり、「こういう人なのだ」と固定的にとらえるのはよくない。