業績が急上昇しているステーキ・レストランチェーン「あさくま」(本社・名古屋市)。代表取締役社長の森下篤史氏(69歳)は、かつては大手メーカーのトップセールスマンだった。その後、50歳で厨房機器販売のテンポスバスターズを創業し、ジャスダック市場に株式上場させた。
会社員として、創業経営者として、頂点を極めた森下さんに「使えない部下」「使えない上司」について話をうかがった。
「使いたくない部下」と「使えない部下」は違う
森下篤史氏(筆者撮影)
私は、社員のことを「使いたくない部下」と思ったことがありません。「使えない部下」はいますよ。仕事ができない人はやはり、「使えない部下」です。だけど、「使いたくない部下」とは意味が違うでしょう。
うちの管理職が「あんな部下は、使いたくない」と言ったら、私は怒ります。「お前はそんなに偉いのか! そんなこと言うお前こそ、俺が使いたくない部下だ!」と。
「使えない部下」を使えるようにするのが、管理職です。当社(あさくま)は成長のスピードが速いから、それについていくことができない社員はいます。たとえば、お店で働いていた社員が店長になる。今度は、マネージャーとなり、いくつかのお店の管理をする。3店舗、5店舗、さらに10店舗とその範囲が広がります。
地位が上がるにつれて、「使えない奴」が生まれるのです。そこで、「このマネージャーはダメだ」ととらえるのは、まずい。人を「こういうやつだ」と固定的にみるのは、よくない。
10店舗のマネージャーをするのは難しかったかもしれませんが、店長に戻すと、生き生きと働く人はいます。人はダメなところばかりじゃない。いいところばかりでもない。あいまいな生き物ですよ。そこをきちんと見てあげないと、人を動かすなんてできないと思います。