チャイナ・ウォッチャーの視点

2016年6月3日

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小原凡司 (おはら・ぼんじ)

笹川平和財団 上席研究員

1963年生まれ。85年防衛大学校卒業、98年筑波大学大学院修士課程修了。駐中国防衛駐在官(海軍武官)、防衛省海上幕僚監部情報班長、海上自衛隊第21航空隊司令などを歴任。IHS Jane’s、東京財団研究員などを経て現職。

 そのために使用される枠組みは国連でなければならない。中国には、国際秩序形成に関わる権利があるという認識でもある。ところが、戦後の国際秩序は、すでに経済を回復した先進諸国によって固められてきた。G7は、この先進諸国によって形成される枠組みだ。

 中国は、先進7か国に含まれていない。そして、「あろうことか、敗戦国である日本が含まれている」のである。G7が国際秩序形成の主役になるというのは、中国にとっては許せない。中国は、戦勝国であるにもかかわらず、国際秩序形成において影響力を行使できないまま、「不当に」抑え込まれるという意味だからだ。

 中国の、G7に対する憎しみにも似た反発は、今回の伊勢志摩サミットに対する中国国内の論調からも窺うことができる。中国のネット上では、「G7の言うことは気にする必要がない。中国は南シナ海や東シナ海の開発を進め、力をつけるためにまい進すれば良い」、「中国はG7の存在がなくても中国は世界一の大国になれる」、「G7は世界の将来が見えていない。日米はすでに衰退している」、「G20でやり返してやる」と、批判一色だ。

議長国・日本への批判も

 こうした、子供じみた中国国内の反発に反応したところで意味がない。しかし、日本は、G7サミットを主催したからと言って、安穏としていて良い訳でもない。日本は、欧州諸国と情勢認識を共有できていないことを真剣に考えなければならないのだ。中国に対する脅威認識について、日本と欧州諸国に差があることは述べたとおりだが、国際経済の状況についても、日本と欧州の認識の差は明らかだった。

 純粋に認識の差があるだけなら、まだ良いかも知れない。今回のサミットで、日本が「リーマンショック以来の危機」であるかのような表現を用いたことについて、欧州各国の首脳から批判が出ていると報じられている。

 さらに、「G7伊勢志摩サミット議長記者会見」において、安倍首相が日本の国内問題である消費税引上げの問題に触れたことも、一部の海外メディアに違和感を以て報じられた。「消費増税延期の口実」にG7サミットが利用された、というのである。

 どの国も多かれ少なかれやっていることであるとは言え、日本が、国内問題処理の口実としてG7の枠組みを利用した、と認識されるのは、日本にとって決して良いことではない。欧州各国の日本に対する評価を下げてしまうことにもなりかねない。日本が孤立してしまっては、国際社会における日本の主張が通らなくなる。

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