チャイナ・ウォッチャーの視点

2016年6月3日

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小原凡司 (おはら・ぼんじ)

笹川平和財団 上席研究員

1963年生まれ。85年防衛大学校卒業、98年筑波大学大学院修士課程修了。駐中国防衛駐在官(海軍武官)、防衛省海上幕僚監部情報班長、海上自衛隊第21航空隊司令などを歴任。IHS Jane’s、東京財団研究員などを経て現職。

 欧州で開催される安全保障に関する会議などでの、欧州各国の国防部や軍、さらにはNATO関係者の発言を聞けば、欧州における最大の脅威はロシアであると理解できる。最近では、「脅威は東だけではない」と言い始めた。「東」とはロシアのことだ。そして、「脅威は南からもやってくる」という。

 「南から」やってくるのは、大量の難民であり、それに紛れ込むテロリストである。そして、問題の根源となっている中東である。しかし、欧州の意識が届くのは、せいぜいここまでだ。中国に関する問題は、経済の問題が主であり、安全保障上の問題としては形式的に少し触れる程度に過ぎない。

 日本が、「中国は脅威だ」と言ったところで、欧州諸国はそれを肌感覚として理解できないのだ。欧州諸国の、「ウクライナに実質的な軍事侵攻を行った」というロシアに対する恐怖感が、日本人にはピンと来ないのと同様である。そこで、最初の疑問になる。中国に対する配慮が示されたにも関わらず、なぜ、中国は反発したのだろうか?

中国がこだわる「国連」の枠組み

 実は、中国が反発しているのは、宣誓の内容というよりも、G7の枠組みについてなのだ。中国が国際秩序を形成する際に使用したい枠組みは、G7ではなく、国連である。なぜなら中国が戦勝国としてのステータスを保持しているからである。中国は、国連安全保障理事会の常任理事国だ。

 日本語では「国連」と名前を変えたこの組織は、そもそも集団安全保障の共同体である。第2次世界大戦の反省を踏まえて、日本やドイツのような「悪者」がまた戦争を起こしたら、「国連」が、すなわち、戦勝国であり戦後世界を牛耳る安保理常任理事国が、この「悪者」をやっつけることを目的としている。日本語とは異なり、英語でも中国語でも名称は変わっていない。「連合国」である。

 中国は戦勝国である。といっても、1945年に第2次世界大戦が終結したとき、中華人民共和国、すなわち現在の中国は、まだ成立していなかった。中華人民共和国の成立は1949年。中国は、戦勝国のステータスを引き継いだが、国力が不足していたこともあり、戦後の国際秩序構築に十分に関わることができなかった。

 中国は、現在の国際秩序は欧米諸国によって都合のよいように構築されたと考えている。だからこそ、中国外交部の、「現在の国際関係は不平等が突出している」といった発言になるのである。経済発展によって国力をつけてきた今こそ、戦勝国たる中国が、国際秩序形成に関わるべきだと考えているのだ。

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