2024年11月22日(金)

古希バックパッカー海外放浪記

2016年9月18日

ネルのシャツを恵んでくれたご婦人とベンチで日向ぼっこ

“喜捨”と“お恵み”

 慈善宿はチャペルを改装したもので隙間風がヒューヒュー通り抜けており室内温度は外気とあまり変わらない。そのうち風が少し収まり薄日が差してきたので外のベンチに移動。貧相な東洋人が寒さに震えているのを見かねてベルギー人のおばさんが厚手のネルのシャツを「これを着なさい」と恵んでくれた。派手な赤、白、青のチェックの柄で私が着るとチンドン屋のようであるが背に腹は代えられない。

 有り難く頂戴して着込んだ。今頃私が寄付したダウンパーカーを誰かが着て、私は女性用のネルのシャツの“施し”を受ける。こうしてキリスト教における喜捨と互恵の精神を体感したのである。

若き巡礼者群像

明るくキリスト大好きな3人の若者とオジサン、題して「明るい信心」

 外のベンチで薄日を浴びているとシンガポール人のジェイがやってきた。彼はマレー系でイスラム教徒として育ってきたが成人してから自らの意志で洗礼を受けてカトリックに改宗したという。

 ジェイは真面目で明るいナイスガイである。数日までにブルゴスの教会付属施設でちょっとおしゃべりしたことがあった。ジェイは慈善宿のチャペルでお祈りしてから日向ぼっこをしにきたようだ。

 そのうちにドイツとフランスの若者も加わっておしゃべり。この二人は昨晩オンタナス(Hontanas)の近くにある中世の教会の廃墟で野宿したという。寝袋に入って夜空を見上げていると無数の星座がゆっくりと回っていて無限の宇宙を体感できるという。しかも昨晩は廃墟の教会の壁に囲まれて天を仰いだので星座の動きがさらにドラマチックであったという。

簡素な2段ベッドは通気性が抜群で「風通しが良過ぎる」

 この二人の話を聞いていたらキリスト教に対する見方が少し広がったような気がした。彼らは素朴にキリストや神の存在を信じている。そして巡礼道沿いにある教会・修道院やキリスト像宗教画などの建築・美術を素直にダイレクトに体感して感動することでキリストや神をさらに身近に感じるという。

 「○○○大聖堂の「十字を背負うキリスト」の絵はメッチャクールだったぜ」

 「君は△△△教会のチャペルどう思った。ステンドグラスのマリヤ様最高だよ」

 「マリヤ様といえば忘れちゃならないのは□□□修道院の入口の大理石のマリヤ像さ」

 二人の会話はこんなカジュアルな調子でテンポが速く止まるところを知らない。日本の“仏像ギャル”や“歴女”のおしゃべりのような軽やかさである。
若い人達が自分の感性や好みで自由に何物にも束縛されずに(時には軽薄に)宗教観歴史観、さらには世界観を広げてゆくのは傍で見聞きしていて楽しいし羨ましくもある。


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