2024年11月22日(金)

WEDGE REPORT

2016年7月7日

 ちなみに、トランプ氏のブレインの能力不足については、すでに米国で問題視されている。3月に5人の政策アドバイザーが発表された際には、「グーグルでもヒットしない者たち」と話題になったほどだ。

 では、日本に理解がなく、能力もないブレインに影響されたトランプ氏の対日政策は、どのような影響を与えていくのだろうか? 戦略国際問題研究所(CSIS)でアジア地域の外交・安全保障を研究するザック・クーパー氏は、「同盟関係に変化はない」と指摘する。

 「米国の強さは、数十年にわたって、共通の価値観を根底とした世界的な同盟の要となってきました。なかでも日米関係は安全保障、経済、文化の面で、米国の同盟関係の強さの源です。トランプ氏が日本や他の同盟国を傷つける発言をしても、米国における同盟についての価値観に変化はなく、同盟は今後も続くでしょう」(クーパー氏)

 クーパー氏の発言は、プロの外交官や専門官の意見と共通する。だが、この種の意見には、希望的観測と長い時間をかけて築き上げてきた日米関係を覆させないという自負心が背景にあり、当然、日本へのリップサービスも込められているとみるべきだろう。

 だが、今年3月にトランプ氏不支持を表明する共和党関係者の署名を報じて話題になった、ニュースサイト「War on the Rocks」のライアン・エバンス編集長は、トランプ氏の利己的な性格が与える影響を懸念する。

 「トランプ氏は、米国が掲げている重要な理念であるグローバルコモンズへのアクセスと商業の自由を可能とする国際秩序を守ることについて、理解していないし、理解しようともしていません。

 この理念によって最も恩恵を受けているのは米国であるにもかかわらず、トランプ氏は国家の利益について考えておらず、自己の利益を優先し、自分の会社との敵対関係しか頭にないのです」(エバンス編集長)

 このようなトランプ氏が唱える孤立主義的な外交・安全保障政策については、氏が属する共和党においてでさえ、懸念を示す向きが多いことは周知の通り。

 というのも、これまでの共和党は、前回の大統領選挙でオバマ大統領に敗れたマケイン上院議員がアジア重視を鮮明にして、アジア・太平洋地域の海軍力強化に努めており、米軍のアジアへのコミットを強く支持してきた。それを覆すような発言を続けるトランプ氏は、共和党にとって、票が集まる人気者であると同時に、厄介者でもあるのだ。


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