次に、「英語ができる人」はどの程度、企業から求められているか、というニーズを考えます。昔から多くのメディアで「これからはグローバル化、英語は必須」といった情報をよく見ていますが、実際は英語が必要とされる業務は多くありません。仕事柄、経営者や人事部の方とは毎日のように話し、企業からの求人情報も毎日目を通していますが、その経験からすると、実は英語が必要とされる業務は5~10%ではないでしょうか。
その求人も、英語は応募のための前提となる条件であっても、それ以外の「本質となる業務ができるか」が最重視されます。つまり、例えば海外営業であれば、「海外での新規企業開拓等の経験・ノウハウが十分にあって、その上で英語は当たり前のように話せます」、という人材が採用の候補者になります。日本企業がグローバル化しようとしている事実はありますし、多くの企業が海外に進出しようとしていることも確かですが、まず、成功している企業は少なく、少なくとも現状では英語が必要とされているポジションは少ない上に、最も求められるスキルは英語ではなくその分野での経験・ノウハウや実績なのです。
今後、英語が必要とされるポジションは確かに増えていくとは思います。 しかし、増えるにしても全体からすればマイノリティーである「英語が必要なポジション」に対して、英語が得意な人が5万といる中で、そこで競争していきますか? リソースのどの程度割けますか? それで勝てますか? という問いへの回答を考えてみましょう。
2000万円のコスパ
そして、効率、選択と集中という視点です。英語での読み書き、聞く、話すを全てマスターするには圧倒的なリソース(時間とお金)の投入が必要であり、英語のマスターに20年間かけるのであれば他のビジネススキル習得に向けた方が良い、というケースが圧倒的に多いのが現状です。
英語ばかり勉強して、肝心の仕事ができない、という人を多くみてきました。上記の個人は例外ではなく、大学までの10年間の英語教育プラス社会人になってから10年間勉強してTOEIC850点、それで海外の人と商談の場で交渉、議論ができるレベルになっているでしょうか?
ちなみに、MBA留学に行けば英語がペラペラになれる、という幻想を抱いている方も未だに多くいるようですが、帰国子女以外の日本人でMBAを取得した人で本当に世界に通じる英語を話している方は残念ながらほとんど見たことがありません。
さらにいえば、そのMBA留学には2年間という時間と、生活費と授業料あわせて合計2000万円程度の投資が必要です。そう考えていくと、英語は圧倒的に効率が悪い(コスパが悪い)スキルと言わざるを得ません。