現在発売中のWedge8月号では『ドローンが起こす空の産業革命』というタイトルで、関連のビジネスの現状と今後の課題についてレポートした。ここではドローンの応用分野である「i-Construction」と「精密農業」について補足する。
i-Constructionで活性化するドローン測量サービス
国内では、土木建設現場での測量というアプリケーションの市場がにわかに活気を帯びてきた。7月9日には日立建機が、Wedgeの記事中で紹介したベンチャー企業のテラドローンと共同で、北海道の炭鉱においてドローンによる地形測量を行ったと発表した。これは国土交通省が推進するi-Constructionに対応するドローン技術の、石炭採掘場という高低差が大きく、広い現場への適用・実証を目的として実施されたものだという。今後、土木建設業界では、i-Constructionへの対応をキーワードにしたドローンによる測量の導入が進むことが予想される。
i-Constructionとは、国土交通省が管轄する工事において、ドローンを使った測量やICT建機による施工を基本としたICT活用施行を推進するという政策で、国土交通省は3月30日に「土工における調査・測量、設計、施工、検査のプロセスにおいて、現在の紙図面を前提とした基準類を変更し、3次元データによる15の新基準を平成28年4月より導入する」とのプレスリリースを発表した。その発注方式として、規模の大きい企業を対象とする工事ではICT活用施工を標準化するとされており、実質的に大手の土木建設会社にICT活用施工が義務付けられたと考えてよいだろう。
「3次元データによる15の新基準」には、まず「調査・測量、設計」の段階では、従来の測量機器やGNSS(グローバル衛星測位システム)を利用した現地測量と有人航空機を利用した空中写真測量によって作成していた2次元の図面に替えて、UAV*によって撮影した測量写真を3次元化した3次元点群データに基づいて設計・施工計画を立案することが謳われている。そして「施工」の段階においても、 UAVによる写真測量を繰り返し行って得られた3次元点群データと設計データとの差分を管理することによって出来高(進捗)を管理するとしている。
*UAV(Unmanned Aerial Vehicle)はsUASとほぼ同義で、いずれも小型の商用のドローンを指すと考えて構わない。
テラドローンのようなドローンによる測量サービスを提供する会社は、土木建設会社からの委託を受け、現地でのドローンによる写真測量と3次元点群データの作成までを行う。ドローンによって土木建設現場での写真測量は、改正航空法によって定められた「人又は家屋の密集している地域の上空」の飛行や「人又は物件から30メートル以上の距離が確保できない飛行」などの国土交通省の許可承認が必要になる条件に該当することが多い。
案件ごとに飛行の経路や期日やドローンの機種などを登録して許可承認が必要になるが、飛行の経路や期日を指定せずに包括的な承認を得ることも可能だ。ちなみに昨年の12月から今年の7月1日までに4255件の許可承認があるが、そのうち55件が包括的な承認で、その多くは報道機関や、風景・スポーツなどの空撮サービスを提供する企業・個人となっている。