2024年5月21日(火)

『山旅々』編集者の「山旅のすすめ」

2016年8月16日

塩の道の面白さ

 それからの私ははじめて聞くこの「塩の道」に興味津々になり、書物を読み、インターネットで調べ知識を深めたのです。

 「塩の道」とはその名の通り「塩を運ぶために利用された道」です。塩はどこで作られるでしょうか?工場ではありません。その昔は海で作られていました。厳密に言えば海の近くでその周辺に住む人々が作っていたわけです。

 ではどのように作るのでしょうか?これは非常に深いお話になるので省きますが、多くは海水を煮詰めて作られます。そうすると必要になるのは火であり、薪が必要になるわけです。

 逆に山に住む人々は生きるために塩が必要になります。こういった事情によって海の人々と山の人々との交流が生まれ、その為に使われたのが「塩の道」というわけです。

 このような歴史を踏まえると「塩の道」というのは非常に古くから使われていた道であることが想像できると思います。明治38年の専売制によって人々が安心して塩を得られるようになったことを引き金に塩の道が様相を変えていったのも事実のようです。それは多くの人々の往来にも耐えられるように道幅が広くなり街道と呼ばれるようになり、車の行き来が必要になれば整地され、コンクリートで固められ車道と呼ばれるようになり、今我々が身近に見ている「道」に変化をしていったのだと思われます。

生きるために必要な塩

 イザベラバートの「日本奥地紀行」という書籍の中で彼女は東北の山中の人たちをみて『不潔であり吹き出物が多い』と指摘しています。これは日本人の非常に優れた素質を見抜いて冷静になってふれているので、決して非難の言葉ではないのですが、東北の人々が風呂に入ることが少ないなど色々な理由があった中の1つに塩が足りなかったという指摘を宮本常一が「塩の道」という書籍でしています。

 「塩を舐めなければ新陳代謝が悪くなり、吹き出物が出たり、目が悪くなる」とも書かれており、塩というのが人間にとって生きるために必要な栄養素だったことが窺えます。

 今でこそわれわれは塩というものに対して、ほとんど無意識といっていいほど何も考えず、無感覚にその必要性を感じなくなっています。今一度塩というものの重要性を考え直し、私たちが口にしている塩というものの知識を深めてみるのも面白いかもしれません。

 このように生きていくための塩を手に入れることは山の人々にとっては非常に重要な要素だったのでしょう。だからこそ知恵を絞り要領良く、海の人々との交流を深めていったのだと思われます。


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