2024年12月10日(火)

家電口論

2016年9月6日

 2011年3月に発生した、東日本大震災、そして福島原子力発電の事故により、日本中の原子力発電が止められたのは、皆さんもご承知の通り。再稼働の条件として、原子力規制委員会が新しく定めた、新規制基準をクリアすることが義務付けられた。

 この新基準には、2点大きなコンセプトが盛り込まれている。1つめは、地震、津波、火山、竜巻、外部火災、及び内部火災、内部溢水などへの対応の新設、もしくは強化。またテロ防止、放射性物質の拡散抑制対策なども新たに設けられた。2つめは、既存の原子力発電所に対しても、新規規制が適用されることである。 

 特に厳しいのは、2つめ。元々の設計思想より厳しいモノが適用されると、お手上げのことも多い。例えば、皆さんも地震対策のために、高速道路の高架脚に鉄輪などがはまっているのを見たことがあると思う。これはまだスペースがあるためできることで、もしスペースがなかったら、作り直しが必要となっていたはずである。

 原子力発電所などは、ある程度予備スペースを取ってあるにせよ、経済施設。基本、各種費用を抑えるために、なるべく小さく、作られているはずであり、後付けの対応は極めて厳しいはずである。それはさておき、現在までに新規性をクリア、稼働したのは、17ある原子力発電所の内、川内発電所の2基。伊方原発の1基。そして高浜原発の3号機、4号機の、総計5基。(ただし、高浜原発の2基は、2016年3月9日の大津地方裁判所による再稼働禁止の仮処分により停止中)それに比べ、廃炉を決定しているのは、5つの発電所、6基なので、いかに大変なものかが分かる。東京電力の柏崎刈羽原子力発電所は、7基の原子炉を持っているが、現在審査中は、柏崎刈羽の6、7号機の2基。残る5基は未申請である。

 今回、縁あって、柏崎刈羽原発を見学することができた。東電は、どのような対処をして、再稼働に望もうとしているのかをレポートしてみたい。

原発の基本と変更ポイント

 原発を語る時に知っておかなければならない知識は、大きく3つある。1つは、核分裂反応とは何か? ということである。核分裂反応とは、燃料のウラン235に中性子をぶつけておきる反応。この反応の最中、膨大なエネルギーがでるのだ。なお、ウラン235を高濃縮すると原爆になる。広島に投下されたリトルボーイには50kgのウランが積まれていた。うち、反応したのは1kgと言われている。たった1kgで広島がなくなったわけだ。危険物と言われるガソリンでも、都市ガスでも1kgでこの様な惨事にはならない。せいぜい自動車一台を燃やす程度だと思われる。

原子炉内模型。上が燃料棒、下が制御棒。制御する時は、下の制御棒が持ち上がり、上の燃料棒の間に入る。

 この膨大なエネルギーを瞬時ではなく、徐々に取り出し、平和利用しようと考えたのが原子力発電である。制御は、中性子の量を調整することで行われる。原子炉内には、中性子を吸収する性質を持つ制御棒がある。そして重要なのが、取り出したエネルギーは使うこと。エネルギーは、光、音、熱、電気などいろいろな形があるが、原子力の場合はエネルギーを「熱」として取り出す。その熱エネルギーで、水を沸かし、その蒸気でタービンを回して電気として使用。

 ここが2つめのポイント。電気自体の作り方は特殊ではないのだ。ボイラーで熱を作り、蒸気を作り、その蒸気でタービンを回すのが火力発電であるが、ボイラーの部分を原子炉に直すと、原子力発電の説明にもなる。しかし、制御棒を入れ、反応を停止させても、「崩壊熱」と言って原子力燃料は熱を出し続ける。

 これは原発を停止させても、冷やし続け、温度管理を続けない限り、原子炉
の温度が上昇し、最悪の結果、炉心融解(メルトダウン)につながるということ。福島第一原発の事故は、これに当たる。とにかく、中性子、そして温度管理が非常に重要なのだ。

 3つめは、放射性物質を伴うことだ。放射性物質が危険なことは言うまでもなく、放射性廃棄物の処分に関しては、世界中頭を抱えている問題である。中性子&温度管理が重要。冷やすための大量の水確保。そして放射性物質対策。
これらの十分な対応が再稼働のために必要なことだ。


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